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編集長がゆく! 「●ン●」作りでは日本で2番目に古い! 御前埼灯台

2019/08/05

不動まゆう灯台現地レポート

御前埼灯台 静岡県御前崎市

1874(明治7)年5月1日 初点灯

いわゆる「3度のメシより灯台が好き」なマニアが綴る灯台レポート。灯台で「見て」「感じて」「味わった」ことをウンチクと共に伝える。

第二回目のレポートは御前埼灯台からお届けしたい。さて、前回は “石造り”の江埼灯台を紹介したが、こちらの灯台は何で作られているか、わかるだろうか。

白く塗装してあるので分かりにくいが、レンガ造りの灯台である。日本にはいまレンガ灯台が8基(灯標を含めると9基)あり、その中でも2番目に古い灯台だ。

レンガ積みの様子は灯台内部に入ると見ることができる。内装に開けられた小窓から見えるのは145年前の人々が積んだレンガ。この積み方をみて、「お、イギリス積みか」と思われた方、流石である。

この灯台も江埼灯台と同様、スコットランド人技師R.H.ブラントンの設計。イギリス積みなのもうなずける。

また、ここ御前崎には江戸時代にも灯台があった。見尾火燈明堂という日本式の灯台で、寛永12(1635)年、現在の灯台がある場所に四方3.6m、高さ2.8mの小さな小屋を建て、海から見える3面の部分は油障子で囲って内側に火を灯していた。村民が2人で番をしていたらしい。つまり、ここは江戸時代から海難事故が多発する危険な海域だったのだ。

 

現在は、灯台のすぐ近くに見尾火燈明堂のレプリカが建てられている。また毎週日曜日は「御前埼灯台を守る会」の方々が運営する「灯台展示室」を見学できるので、御前埼灯台の歴史について学ぶことができる。

塔の高さは約22.5m。私は灯台マニアのくせに高所があんまり得意じゃないが、踊り場にでてもビル5階ぐらいの高さ。あまり怖く感じない。

この塔の高さの割に、灯ろうが大きい。

全体のバランスでは頭でっかちに見える。同じく煉瓦造灯台の尻屋埼灯台と比べてみると…。

御前埼灯台

尻屋埼灯台

ね! 頭(灯ろう)が大きい。私はそんな御前埼灯台も大好きだが、なぜ灯ろうが大きいのだろうか。それは、大きなレンズを入れるためである。

では、レンズが点灯する姿を見てみよう。

ん? レンズに対して空間に余裕があるようにみえないだろうか。もしこのレンズを入れるために設計したのであればもっと小さな灯ろうでよかったはずだ。

そう、実はこの灯台、建築当時は第1等レンズが入っていた(灯台のレンズは1〜6まで等級が分かれていて、その数が小さいほど大きい。もし1等レンズと背比べしたら、私を軽く超えて高さ2m59㎝もある)。そのレンズが戦争で被害にあい、戦後に入れたレンズが第3等大型レンズ。こちらは高さが157㎝ぐらい。もちろんそれでも点灯している姿は美しい。

明治から昭和に時代変わって、電気によって強い光を出せるようになったため、第1等レンズである必要がないと判断したのだろう。

現在のレンズは前後に面が2枚ついていて、20秒で1回転することで「10秒に1回ピカッと白く光って」見える。(こうした各灯台で決められた光り方のことを「灯質」といい、10秒に1回ピカッと光ることで、海上から光だけをみても御前崎であることがわかる)

私は光っているレンズを眺めることにトキメキを感じる。やっぱり灯台は働いている時が一番かっこいいのではないだろうか。そんな灯台レンズファンのためと言ってもいい、御前埼灯台を満喫するのにうってつけのお宿&カフェがある。灯台の目の前の「珈琲 八潮」さんである。

猫ちゃんが迎えてくれるカフェではこだわりのコーヒーがいただけるし、(猫ちゃんが苦手な方も、オーナーの女性がちゃんとケアしてくれるので大丈夫。私は猫が大好きなので、ナデナデさせてもらえて大満足だった)

 

 

 

 

お宿として灯台側の部屋を予約できれば、一晩中だって眺めながら眠りにつくことができる。また泊まり客は屋上にも登らせてもらえるので、こんな景色が堪能できる。

灯台の光を満喫した翌日、私は近くの「なぶら市場」で海鮮丼を食べた。(なぶらとは海中の魚の群れのこと)

食事をしながら地元の方にこんな話を聞いた。御前崎は干し芋が誕生した場所らしい。最近ヘルシーなおやつとして再注目されている干し芋。

江戸時代中期、薩摩藩の御用船が御前崎沖で難破した。御前崎の村民は救助を行い、そのお礼としてサツマイモの栽培方法が伝授されたとのこと。そのサツマイモを蒸して、御前崎特有の空っ風に吹かれたことで干し芋が誕生。これを難破船文化だと表現していた。

灯台は船が難破しないために建てられる。しかし難破というネガティブなことからも文化が生まれるのか…。

ちょっと複雑な気持ちになりつつも、お土産に干し芋を探していたら、「亀まんじゅう」を見つけた。御前崎では亀が産卵するらしい。

うん、可愛すぎて食べづらいのは、「銘菓ひよ子」と同じ。でも美味しいよ。

不動まゆうプロフィール画像

執筆者プロフィール

不動まゆう

灯台専門フリーペーパー「灯台どうだい?」編集発行人。自腹で世界各地の灯台を取材し発行している。灯台女子としてテレビ、ラジオ出演、新聞、雑誌への掲載も多い。毎年「灯台フォーラム」を企画・運営する。講演等で「灯台」や「フレネルレンズ」の文化的価値を訴え、「100年後の海にも美しい灯台とレンズを残す」ことを目指して活動の幅を広げ続けている。著書『灯台はそそる』(光文社)、『灯台に恋したらどうだい?』(洋泉社)。2018年11月1日海上保安庁長官から表彰を賜る。