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編集長がゆく! 灯台界のショートケーキ、江埼灯台を堪能!

2019/07/11

不動まゆう灯台現地レポート

いわゆる「3度のメシより灯台が好き」なマニアが綴る灯台レポート。
灯台で「見て」「感じて」「味わった」ことをウンチクと共に伝える。

第一回目のレポートは、今年『恋する灯台』に選ばれた灯台界の〝ショートケーキ〟こと、江埼灯台だ。

ショートケーキだと?

石造りの堅牢で硬派な明治期灯台にスイーツを重ね合わせるなんていい度胸だと思うかもしれないが、ちょっとご覧いただきたい。


ほら、石積みによる表面は生クリームが塗られたように見えるし、

全体のシルエットは切り分けようとしているホールケーキみたいだ。

さらに灯籠(光源の入っている部分)はイチゴのように見えないだろうか。

実際、夜になると赤く光る(白と赤で色が交互に変わる)。

場所は兵庫県淡路島の北側。明石海峡大橋のたもとにあり、神戸から車で約30分。駐車場から徒歩5分ほどの距離は、灯台の中でも抜群にアクセスがいいといえる。

と言っても石段を登っていくので、運動不足じゃなくても少し息が切れる。

 

車を停めた江崎公園には灯台のモニュメント。これにより灯台へ道がここから始まることがわかるし、とても可愛いと思う。でも江埼灯台に似てないのは何故なんだろう。いや、なんとなく理由の想像はつくんだけど。

日本には内部を見学ができるよう管理されている灯台が現在16基あるが、多くの灯台は外側から眺めることしかできない。

しかし灯台記念日など特別な日に、海上保安庁さんが一般公開してくれることがあるので、こうしたチャンスは見逃さないようにしたい。

灯台の内部には蓄電池や制御装置が並ぶ部屋、倉庫などがある。

これは多くの灯台に共通しているが、意外だったのは江埼灯台の倉庫にはタイムカプセルが置かれていたことだ。開封予定は2021年か。9年の時を経て取り出されたとき、どんな気持ちになるんだろう。人々の思い出も抱擁する江埼灯台。懐が深い。


灯室(レンズのある場所)に登ってみよう。たとえば日本で一番背の高い出雲日御碕燈台は階段が163段もあるが、江埼灯台の塔は低い。あっけないほどすぐに美しいレンズと対面することができた。

このレンズは第3等大型の不動レンズと呼ばれる。「不動レンズ」というのはその名の通り動かない、つまり回転しないレンズのこと。

灯台は光り方によって、どこの灯台か識別できるよう、個々に光の周期が決められていて、この灯台では5秒毎に白と赤の光が交互に見えるよう、レンズではなく内部の赤いフィルターを回転させ、周期を作り出している。

ちなみに、このレンズはメーカー不明と言われているが、私は様々な方から情報を集め、考察したところイギリスのチャンスブラザーズ製だと推測している。

ちょっとマニアックな話になっていることを自覚していて、さぐりさぐり原稿を書いているが、どうしてももうひとつ書きたい。

この灯台には明治7年の建築当初から免震装置が設計されていた。

それがこれだ。灯器の下におわん型のくぼみを作り、青銅製の球を配置。これにより灯器に伝える振動を抑えようと考えていたようだ。

この灯台はスコットランド人技師のR.H.ブラントン設計の灯台だが、彼の師であるスティーブンソン兄弟が、地震が多い日本を案じて指示をしたものらしい。こうした建築技術史が実物として残っているのも灯台の面白いところだと思う。

ところで淡路島といえば玉ねぎ。灯台からほど近くに「道の駅あわじ」があり、玉ねぎの天ぷらを味わうことができる。あいにく私の唯一の苦手な食べ物がネギ類であるため、実際には食しておらず恐縮だが、みずみずしく甘みがあって香りが濃厚とのこと。ぜひ淡路島に来たら玉ねぎを食べて血液をさらさらにしてほしい。

ちなみに私の好物はせんべいである。スイーツよりも断然せんべいが好きだ。そして淡路島でせんべいといえば「たこせんべい」。

これはとても危険な食べ物だった。やめられない止まらない地獄。ビール片手に理性を失った私は、夫に申し訳程度の2枚をのこして輪ゴムで大袋の口をとめた。

不動まゆうプロフィール画像

執筆者プロフィール

不動まゆう

灯台専門フリーペーパー「灯台どうだい?」編集発行人。自腹で世界各地の灯台を取材し発行している。灯台女子としてテレビ、ラジオ出演、新聞、雑誌への掲載も多い。毎年「灯台フォーラム」を企画・運営する。講演等で「灯台」や「フレネルレンズ」の文化的価値を訴え、「100年後の海にも美しい灯台とレンズを残す」ことを目指して活動の幅を広げ続けている。著書『灯台はそそる』(光文社)、『灯台に恋したらどうだい?』(洋泉社)。2018年11月1日海上保安庁長官から表彰を賜る。