編集長がゆく! 1月末がオススメ!水仙の香りに包まれた六島灯台

2020/01/17

不動まゆう灯台現地レポート

岡山県 六島灯台

いわゆる「3度のメシより灯台が好き」なマニアが綴る灯台レポート。灯台で「見て」「感じて」「味わった」ことをウンチクと共に伝える。

その島で最初に「おかえり」と迎えてくれたのは1匹の猫だった。

「おかえりって…私、初めてこの島を訪れるのだけど…」と口ごもりながら足元をみると、いつの間に集まったのか、たくさんの猫たちが行儀よく並んでいる。

その様々な毛色や表情を眺めていると、また別の猫が「灯台はこっちだよ」と手招きする。

どうやら私がこの島を訪れた目的を見透かされたようだ。

と、物語のような書き出しをしてみたが、これは事実である。

今回、私が訪れた六島は、瀬戸内海に浮かぶ周囲5kmロに満たない人口60人の小さな島。岡山県の最南端にあたる笠岡諸島のひとつだ。

定期船に乗ること1時間。港に降り立つと…。

おかえりと迎えてくれた猫

たくさんの猫が行儀よく鎮座する

灯台へ導いてくれる猫

この猫たちは漁業で使うブイ(浮き)で作られているため「ブイねこ」と呼ばれている。島に住む一人の男性の手作りだそうだ。

可愛い表情(たまに強面の猫もいて面白い)が島の雰囲気を優しく演出すると同時に、道案内としての役割も大きい。おかげで方向音痴な私が、まったく地図を見ずとも、迷わずに徒歩20分の距離を楽しく歩き、灯台に到着することができた。

灯台の後ろ姿にぐっとくる。

灯台の踊り場のところが出っ張っている。以前ここには副灯(予備の灯器)が置かれていたようだ

まだ5等レンズが残っていることに感動する(多くの灯台はLEDなど別の灯器に変えられており、レンズで点灯する灯台は文化的価値が高く貴重である)

そして周りを見渡すと…

灯台と水仙。こんな景色を楽しむことができる

そう、この島のもう一つの名物は水仙だ。六島小学校の児童やボランティアの方々が水仙を植えて、今ではすっかりこの島の名物になった。

私が訪れた2020年1月13日は、まだ半分ほどの株しか咲いていなかったが、あと10日~2週間で満開となるらしい。1月下旬〜2月頭が狙い目だと思う。

青い空に白亜の灯台。そして風に揺れる水仙とその香り…。なにここ…天国?

灯台前のベンチに座ると、たくさんの島影と、気持ちよさそうに走る船たちが視界に広がった。

瀬戸内海の島々にそれぞれ灯台があると思うとワクワクする

島に到着したのは10時前だが、帰りの船の時間は14時30分。この島に来ると4時間以上ゆったりと過ごすことが必然となる。

これをなによりの贅沢と感じつつ、何をして過ごそうかと考える。

灯台と絶景を楽しんだあとは、クラフトビールでご機嫌になるのはどうだろう。

 

前浦港のすぐ向かいに昨年オープンした「六島浜醸造所」は、大阪出身のオーナーがこの島を盛り上げるため、昔あったという麦畑を再び蘇らせ、ビール作りに励んでいる。

祖父母の家のあるこの島に、小さい頃から親しみを抱いていたそうだ。

 

私がいただいたオイスタースタウトは、同じく笠岡諸島の北木島の牡蠣殻をつかったビール。黒ビールなのに苦みは少なく、コクと甘みが芳醇でとてもおいしかった。

醸造所を出て、ぶらぶらと散策していると、おばあさんが歩いてきた。

「こんにちは」

私の挨拶に対する返答は「みかんたべる?」だった。

そしてビニール袋からひとつずつ取り出して、6つも分けてくれた。

「竜ちゃんとこにいった?」

竜ちゃん…?

「あのビールのとこ。竜ちゃんは私の孫なの」

さっき、その竜ちゃんからおばあちゃんの話を伺ったばかりだった。こんな物語のような展開が、島ではあたりまえのように起こるんだなぁと実感する。

水仙の香りに包まれた灯台が島の中心にあり、

ブイねこが道案内を引き受け、

リアルな猫は自由に路地を闊歩し、

ビール造りに励む竜ちゃんと、

みかんで訪問者の心を潤してくれるおばあちゃん。

瀬戸内海に包まれた島は動じることがなく、ゆったりしている。

私はわずか4時間ですっかりこの島の虜になった。

▼プチ情報 その1

2月1日には「六島の水仙ツアー」が組まれ、参加者は灯台の内部も見学可能とのこと。

https://okayama.mypl.net/event/00000347451/

▼プチ情報 その2

六島浜醸造所

https://mushimahamajo.amebaownd.com/