国の重要文化財にも指定された、現存する日本最古のレンガ造り灯台 【三重県鳥羽市 菅島灯台】

2023/03/31

はるか昔から海の安全を守ってきた灯台だが、その役割は時代とともに変化してきている。日本の近代史において建築物としての灯台が持つ重要性の大きさは計り知れないが、歴史や関係する人々、使われてきた技術、所在する地方による特色など、様々な観点から見る灯台は、現代でも興味深い存在であることは言うまでもないだろう。

鳥羽市教育委員会の文化財専門員である豊田祥三さんは「灯台は船乗りたちが自分が今どこにいるかを確かめるための標識であり、目印の役割を担っています。現在では船にはGPSが付いているので昔ほどその役割は大きくなくなってきているところはあります」と、やはり時代につれて灯台の役割が変化してきていると指摘する。

1873(明治6)年の初点灯から今年で150周年を迎える鳥羽市の菅島灯台は、現存する日本最古のレンガ造り灯台で、昨年2022(令和4)年9月20日に国の重要文化財に指定された。

豊田さんは「この周辺の海域は昔から非常に危険な海の難所として知られており、多くの船が難破したり遭難したりしてきた場所だったため、江戸幕府によって灯台の前身となる“おかがり堂”というものが作られました。そこに火を点して船乗りたちの目印にしたわけです。その後、明治政府がこの洋式灯台を建てさせたのです」と、その歴史を解説する。

さらに、国の重要文化財に指定されたことについて「レンガで造られているんですが、レンガの長い面(長手)と短い面(小口)を1段ずつ交互に積む“イギリス積み”が採用されています。設計したのがイギリス人の技師、ブラントンだったのでその積み方になっています」と語る。明治次代初期に当時としては最先端の技術で造られた建造物であり、それが現存することの価値は大きい。

また、「地域のシンボル的な存在として非常に親しみを持たれていまして、7月上旬には“しろんご祭り”という海女さんの祭りがあるんですが、その時には灯台の内部を公開しています」と地域との結びつきについても話し、「国の重要文化財に指定されたことを契機として、灯台を中心に島の活性化につながっていけば」とさらなる発展にも思いを馳せていた。

 

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