赤白スタイルで自主的に灯台をPRする「石狩灯台お兄さん」が名誉灯台長に【北海道石狩市 石狩灯台】

2023/07/25

赤と白に塗った顔面と手作りのかぶり物、ストライプのシャツで北海道石狩市の石狩灯台を模したインパクト抜群のキャラクター「石狩灯台お兄さん」が2023年6月5日、同灯台の「名誉灯台長」の称号を小樽海上保安部から授与されました。


石狩灯台は1892(明治25)年、当時は北海道内陸部への重要な水運航路だった石狩川の河口に建設されました。建設当時は木製で、1908(明治41)年に鉄造に建て替えられました。1990年代に入ってから、劣化した部分の補修・補強などを行いましたが、内部は建造当時のまま残っており、現存する灯台としては北海道最古となります。

そんな石狩灯台の「名誉灯台長」になった石狩灯台お兄さんを演じるのは、石狩市職員の高木順平さん。とは言っても公務ではなく、全くの自主的な活動なのだとか。いろいろ気になる要素が満載なので、ご本人に直接インタビューしてみました。

――「海と灯台プロジェクト」運営事務局の佐々木です。よろしくお願いします。まず、「石狩灯台お兄さん」誕生の経緯を教えてください。


高木さん:2017年に実施された石狩灯台125周年記念イベントを、商工労働観光課の職員として担当したことがそもそものきっかけです。市民の皆さんがボランティアとして協力してくださる姿に、「市の職員である自分も何かできたら」と思うようになりました。

その時がやってきたのは2018年10月。石狩灯台とその周辺を巡る市民向けのバスツアーを企画し、自作した灯台の帽子をかぶって案内係を務めました。想像以上に大ウケで、参加者みんなが大笑いしてくれました。やがて「石狩灯台の妖精」という石狩灯台お兄さんの設定が生まれ、今に至ります。市の職員である私は、灯台の妖精に体を貸している存在です。


――そこからどんどん活動が発展していったのですね。


高木さん:はい。2019年から、石狩灯台の一般公開や灯台周辺で開催されるイベントがあるたびに、「石狩灯台お兄さん」として現地に登場しています。イベントの際は豊富な知識を持つ観光ボランティアの皆さんが来場者に灯台の解説をしていますので、その部分はお任せしつつ、来場者と一緒にポーズを取って記念写真に写ったり、石狩灯台お兄さんの決め台詞「赤白つけようぜ!」を言ってくれた人に手作りの缶バッジをプレゼントしたりして、来場者に楽しんでいただくことが主な活動です。


――来場者が喜んでいる様子が目に浮かぶようです。あらためて、石狩灯台お兄さんから見た「石狩灯台の魅力」を教えていただけますか。


高木さん:まず、海から約1km離れた砂浜に立っていることですね。建造当時は石狩川の河口に建てられたのに、川が運んだ土砂が長年にわたって堆積した結果、今では海から離れてしまったという歴史におもしろさがあります。

建て替え当時は白一色だったのに、映画(喜びも悲しみも幾歳月)の撮影のために赤と白に塗られ、そのまま定着したというのも今では考えられないような話です。

現在の灯台は建造から115年経過した今も現役で、一般公開の際は建造当時の内壁や今はふさがれている窓の跡などを通して、そこに刻まれた歴史を感じることができます。

石狩灯台がある石狩市本町地区は、かつてはサケ漁が盛んで、経済や文化の中心地として大いに繁栄した「石狩発祥の地」。当時から残るさまざまな歴史的建造物が、その頃の面影を今に伝えてくれます。灯台はその中でも最もシンボリックな建造物なので、もっとたくさんの人に足を運んでほしいですね。


――名誉灯台長になった今のお気持ちは。


高木さん:顔を赤白に塗ってバッジを配っているだけの自分が称号を受けていいのか、もっとふさわしい人がいるのではないかと当初は思いました。ですが、自分が名誉灯台長の称号を受けたことで石狩灯台が多くのメディアに取り上げられ、テレビの全国放送でも紹介されました。石狩灯台の姿が全国に流れる機会はこれまでほとんどなかったので、とてもうれしいです。


――石狩灯台お兄さんに会いたくなったらどうすればいいですか?


高木さん:基本的には年に3回、5月と6月に実施される灯台の一般公開、そして10月の灯台ライトアップイベントに登場します。最近は、石狩灯台お兄さんがいるから石狩灯台に行ってみよう、と足を運んでくれる人が増えてきて、ありがたいです。このほかにも、まれに出現することがありますが、いつ出現するかは妖精のお導き次第です。


――名誉灯台長になったのを機に、活動を広げていくお考えはありますか?

高木さん:あまり手を広げると長続きしないと思うので、これまでと変わらず地道に続けていきたいと思います。

ひとつ、最近うれしかった話をさせてください。今年5月の灯台一般公開の時、4~5歳くらいの女の子が「出待ち」をしてくれて、自分で描いた石狩灯台と石狩灯台お兄さんの絵をプレゼントしてくれました。その子は6月の一般公開の時にも来てくれて、再び灯台と石狩灯台お兄さんの絵をプレゼントしてくれました。きっとその女の子は、大人になっても石狩灯台お兄さんや石狩灯台のことを忘れないだろうと思います。

そう考えると、自分の活動は石狩市民の「シビックプライド」に貢献しているのかなと感じます。私がいつか石狩灯台お兄さんの活動をやめてしまったり、この世を去ったりしても、誰かがその志を継いで、同じように灯台を愛する活動をしてくれたらいいなと思っています。

――ありがとうございました。

 

石狩灯台への愛を文字通り全身で表現し、全国にその魅力をPRしている石狩灯台お兄さん。次に登場するのは、2023年10月28日に実施する灯台ライトアップイベントになる予定です。現存する北海道最古の灯台と、インパクト絶大な「妖精」に会いに、足を運んでみませんか。

写真提供:石狩観光協会
文:佐々木康弘