ロケ地に選ばれる剱埼灯台 その魅力と灯台愛好家の知られざる奮闘

2024/08/29

三浦半島の南東端に立ち、東京湾の玄関口を照らす「剱埼(つるぎさき)灯台」(神奈川県三浦市)が、映像作品の舞台となっています。

剱埼灯台は、徳川幕府が幕末に4カ国と結んだ「江戸条約」で建設を約束した8カ所の灯台のひとつ。1871(明治4)年に国内7番目の洋式灯台として初点灯しました。切り立った断崖の上に立っており、その下には荒波が打ちつける岩礁が広がっています。目を上げれば、浦賀水道を隔てて対岸の房総半島を遠くに望むことができます。

映像作品に登場する剱埼灯台

そんな剱埼灯台は、動画サービスNETFLIXで2023年8月から公開されているトーク番組「LIGHTHOUSE」の最終回に、歌手・俳優の星野源さんと、お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭さんの2人が訪ねる目的地として登場。テレビ東京系で6月から8月にかけて放送されたドラマ「星屑テレパス」では、ヒロインの自称・宇宙人の女の子とかかわりの深い場所としてたびたび登場していました(各動画配信サイトで配信中)。

▲ドラマ「星屑テレパス」公式Xより

古くは、仮面ライダーやゴレンジャーのロケ地として使われたり、近年ではアイドルグループ「桜エビ~ず(現:ukka)」のMVのロケ地として使われるなど、さまざまな映像作品に活用されています。


美しい映像に人知れず協力していた「サポーター」

この剱埼灯台で毎週草刈りを行い、景観の維持管理に努めているのが、ボランティア団体「剱埼灯台サポーター」。灯台の敷地内にやぶが生い茂っているのを見かねた灯台愛好家の石島薫さんが1人で草刈りを始めたのが始まりで、2022年3月には海上保安庁が灯台の維持管理を託す「航路標識協力団体」に指定されました。


▲石島さんが草刈りを始める前(上)と最近の様子

現在は石島さんを代表に、6人の灯台愛好家で活動しています。メンバー全員が三浦市外在住ですが、夏場は毎週草刈りを行っているほか、年に数回のペースでイベントを実施しています。

「星屑テレパス」の撮影に直接は関わりませんでしたが、ロケが行われた5月から6月は「ドラマでの見栄えをよくしたいので、いつも以上に心を込めて草刈りをした」という石島さん。「灯台のシーンをよく見ると、芝生が同じ高さできれいにそろっているのが分かると思います」と、マニアックな見方を教えてくれました。

剱埼灯台サポーターの皆さんはドラマ撮影が終わった後も毎週末に草刈り活動を行っており、作業中は灯台の入口に「星屑テレパス」の公式ポスターやメイキング風景を掲示しています。

剱埼灯台がロケ地に選ばれる理由とは


「岬の先端にぽつんと立っていて見晴らしが良い、という一般的な灯台のイメージに当てはまること。そして、変に観光地化されていないという良さ。この2つが映像の作り手に選ばれる理由ではないでしょうか。

灯台の近くに車を停められないため、少し離れた駐車場やバス停から歩く必要はあります。ですが、星屑テレパスのプロデューサーさんがドラマの裏話として、『不便な点はあるが、ドラマとして一番“画”になる土地で撮影したいとの理由で剱崎灯台での撮影を決めた』という趣旨のことを書いていらっしゃいました(※)。デメリットを上回るロケーションの良さが認められた思いです」(石島さん 談)

※出典:テレ東ファン支局「制作ウラ話」ロケ地の灯台を探しに

剱埼灯台を訪ねるならこれからがベストシーズン?

猛暑の影響もあってか、この夏は剱埼灯台を訪れる人が例年より少なかったそうですが、「ドラマ効果もこれからだと思うので、期待しています」と石島さん。「景色の良さはもちろん、2等レンズという大きなレンズの美しさにもぜひ注目していただけたら。涼しくなったらぜひ、剱埼灯台においでください」と呼び掛けています。

文 佐々木康弘

取材協力・写真提供 剱埼灯台サポーター(公式X