「新たな灯台利活用モデル事業」は、灯台が守り、見つめてきた海、地域の様々な物語と灯台の価値を編集し、日本の海洋文化をより魅力的にし、灯台の存在意義を高めていくモデル事業への助成プログラムです。本事業は、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」の取り組みのひとつです。
事業全体の目的
灯台の様々な利活用モデルを創出することで、
灯台の存在意義を高め、灯台を起点とする海洋文化を次世代へと継承していく
事業全体における仮説
「灯台利活用事業モデル」の取り組みを
公募・実施支援して創出し、
全国に横展開することで、灯台利活用を推進できるのではないか
対象となる事業
5つのゴールの達成に資する内容を行う事業について、
全国発信に資する灯台利活用の先駆的事例モデルを創出する
- 灯台をシンボルとした美しい海の景観を地域の誇りに
- 郷土の海にまつわる歴史・文化を洗練された物語に
- 海洋環境の保全を組み込み、先駆的地域としてのロールモデルに
- 異分野・異業種と連携した”灯台コラボレーション”を地域間の絆に
- 特別感のある時間・空間デザインへの挑戦を世界に
2022年度 採択事業
沢崎鼻灯台ほか
新潟県佐渡市
灯台体験プログラムの開発による島の観光活性化
島まるごと灯台調査を行い、地域の歴史や食と灯台設置の背景を学ぶツールやメニューを検討、島内主要灯台の灯台体験プログラムの検討
12事業の実施結果
成果
灯台には、近代産業建築物として、また地域の海の記憶を留める
海洋文化遺産としての魅力や価値があることは明らかとなった。
- 12事業すべて、その灯台固有の役割や歴史をふまえたストーリー設定をすることができた。
- ストーリーに基づくイベントやツアーなどを企画、試験実施を行うことができた。
- 取り組みは注目を集め、のべ532件のメディア露出につながった。
課題
一方で、事業化や継続性の面で、以下の課題が明らかとなった
- 灯台の管理に関する考えは海保の管区ごとに異なり、灯台や敷地の利用に消極的な地域もある
- 灯台敷地は国有地であるため、活用には一定の制限がかかる
灯台の利活用を促進させるためには、関係省庁とのさらなる調整が必要である。
(調整せず現時点で可能な方法…灯台に隣接する土地で事業を行い、景観として灯台を生かす。事業者が航路標識団体となって、認められている範囲で灯台を利用した事業とする。) - 一般市民の灯台に関する知識や興味関心は想定以上に低かった。その存在を認識していない地元住民も多い。
- 灯台および灯台敷地には、水道やガス、トイレなどの設備が整っていないケースがほとんど。
灯台の利活用は高コストである。
※3月時点で、12事業者にヒアリングしたところ、「次年度自己負担ありで申請」は2事業者のみ。
(大バエ鼻灯台…平戸市がイベント費用を一部負担/恵山岬灯台…隣接する市営ホテルがイベント費用を一部負担) - 当事業の次年度の募集要項には、実施期間や応募要件など、自治体や企業の参画が困難な部分があることが分かった。
(実施期間:夏~年度末まででは予算がつけづらい、等)
結論
今回の事業を通じ、12灯台のストーリー設定や、それを生かしたイベント等の
企画・試験実施を行い、いくつかの事業モデルを創出できた。
しかし、灯台利活用を全国的に推進するためには、
事業性、継続性の点において課題があることが分かった。
今後必要な取組みは、海上保安庁や財務省との協議や、
灯台の利活用に企業や自治体が参加しやすくするための仕組みづくり
および働きかけ、情報提供などである。
また、それらをスムーズに進めるために、
灯台の歴史や役割、利活用の可能性に関する広報はより重要である。