2022年度 新たな灯台利活用モデル事業

「新たな灯台利活用モデル事業」は、灯台が守り、見つめてきた海、地域の様々な物語と灯台の価値を編集し、日本の海洋文化をより魅力的にし、灯台の存在意義を高めていくモデル事業への助成プログラムです。本事業は、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」の取り組みのひとつです。

事業全体の目的

灯台の様々な利活用モデルを創出することで、
灯台の存在意義を高め、灯台を起点とする海洋文化を次世代へと継承していく

事業全体における仮説

「灯台利活用事業モデル」の取り組みを
公募・実施支援して創出し、
全国に横展開することで、灯台利活用を推進できるのではないか

対象となる事業

5つのゴールの達成に資する内容を行う事業について、
全国発信に資する灯台利活用の先駆的事例モデルを創出する

  1. 灯台をシンボルとした美しい海の景観を地域の誇りに
  2. 郷土の海にまつわる歴史・文化を洗練された物語に
  3. 海洋環境の保全を組み込み、先駆的地域としてのロールモデルに
  4. 異分野・異業種と連携した”灯台コラボレーション”を地域間の絆に
  5. 特別感のある時間・空間デザインへの挑戦を世界に

2022年度 採択事業

2022年度の「新たな灯台利活用モデル事業」では、全国12の灯台に関する調査研究事業を採択しました(事業期間:2022年9月~2023年3月)。各灯台にて行われた調査や実証実験、それによる成果をご紹介します。
潮岬灯台

潮岬灯台

和歌山県串本町

旧官舎を「灯台守体験ができる宿泊施設」に!

耐震調査や改修案、滞在中の体験プログラムづくり、海保への国有財産使用許可申請、地域での継続運営方法を検討

大バエ鼻灯台

大バエ鼻灯台

長崎県平戸市

「灯台マルシェ」を人々が集う新たな地域催事の場に

講演会、ワークショップ、灯台メニュー開発、地域の人々との協働で灯台マルシェ開催

生地鼻灯台

生地鼻灯台

富山県黒部市

官舎跡の活用含む宿泊体験プログラムづくりで観光事業を

生地地区周遊ツアー開発、タウンミーティングの開催、灯台資料館と官舎跡を活用した宿泊施設の整備検討

長尾鼻灯台

長尾鼻灯台

鳥取県鳥取市

高校生の地域学の授業に灯台プログラムを

高校で9回の連続授業(海保の灯台講義や灯台見学等)。学びを元にマンガを作成・配布

恵山岬灯台

恵山岬灯台

北海道函館市

灯台を生かした観光の魅力づくりで地域活性化

知られざる恵山岬灯台の物語を発掘し、ツアー開発や「灯台サウナ」等の体験メニューを開発

野間埼灯台

野間埼灯台

愛知県美浜町

様々な灯台体験プログラム開発による拠点づくり

周辺の施設整備の検討、フォトサービスやサイクルツーリズムなどの収益プログラムの開発

佐田岬灯台

佐田岬灯台

愛媛県伊方町

灯台エリアの観光ルート開発と体験メニュー開発で地域活性化

灯台周辺でのアクティビティ体験メニューの開発、旧官舎跡地を活用したグランピング宿泊の検討

出雲日御碕灯台・鷺浦灯台

出雲日御碕灯台・鷺浦灯台

島根県出雲市

神話×灯台のストーリーによる観光ルート開発

灯台の成り立ちを日御碕神社や日本人設計者による建設の歴史から紐解き、ツアーを試験実施

沢崎鼻灯台ほか

沢崎鼻灯台ほか

新潟県佐渡市

灯台体験プログラムの開発による島の観光活性化

島まるごと灯台調査を行い、地域の歴史や食と灯台設置の背景を学ぶツールやメニューを検討、島内主要灯台の灯台体験プログラムの検討

樺島灯台

樺島灯台

長崎県長崎市

恐竜博物館とつなぐ灯台体験メニューの開発

灯台の魅力を調査。それを生かした、灯台関連イベントの復活に取り組む灯台まつり等

室戸岬灯台

室戸岬灯台

高知県室戸市

官舎跡を活用した地域一体型イベントの検討

調査研究を実施、結果や灯台周辺の魅力を生かした食イベントや散策ツアーを試験実施

チキウ岬灯台ほか

チキウ岬灯台ほか

北海道室蘭市

灯台宿泊体験プログラムの検討

灯台と室蘭エリアの文化と名所を結びつけたツアーや体験、灯台周辺地での宿泊事業を検討

12事業の実施結果

成果

灯台には、近代産業建築物として、また地域の海の記憶を留める
海洋文化遺産としての魅力や価値があることは明らかとなった。

  • 12事業すべて、その灯台固有の役割や歴史をふまえたストーリー設定をすることができた。
  • ストーリーに基づくイベントやツアーなどを企画、試験実施を行うことができた。
  • 取り組みは注目を集め、のべ532件のメディア露出につながった。

課題

一方で、事業化や継続性の面で、以下の課題が明らかとなった

  • 灯台の管理に関する考えは海保の管区ごとに異なり、灯台や敷地の利用に消極的な地域もある
  • 灯台敷地は国有地であるため、活用には一定の制限がかかる
    灯台の利活用を促進させるためには、関係省庁とのさらなる調整が必要である。
    (調整せず現時点で可能な方法…灯台に隣接する土地で事業を行い、景観として灯台を生かす。事業者が航路標識団体となって、認められている範囲で灯台を利用した事業とする。)
  • 一般市民の灯台に関する知識や興味関心は想定以上に低かった。その存在を認識していない地元住民も多い。
  • 灯台および灯台敷地には、水道やガス、トイレなどの設備が整っていないケースがほとんど。
    灯台の利活用は高コストである。
    ※3月時点で、12事業者にヒアリングしたところ、「次年度自己負担ありで申請」は2事業者のみ。
    (大バエ鼻灯台…平戸市がイベント費用を一部負担/恵山岬灯台…隣接する市営ホテルがイベント費用を一部負担)
  • 当事業の次年度の募集要項には、実施期間や応募要件など、自治体や企業の参画が困難な部分があることが分かった。
    (実施期間:夏~年度末まででは予算がつけづらい、等)

結論

今回の事業を通じ、12灯台のストーリー設定や、それを生かしたイベント等の
企画・試験実施を行い、いくつかの事業モデルを創出できた。
しかし、灯台利活用を全国的に推進するためには、
事業性、継続性の点において課題があることが分かった。

今後必要な取組みは、海上保安庁や財務省との協議や、
灯台の利活用に企業や自治体が参加しやすくするための仕組みづくり
および働きかけ、情報提供などである。
また、それらをスムーズに進めるために、
灯台の歴史や役割、利活用の可能性に関する広報はより重要である。