「恋する灯台」が見守る海で、つがいのアワビに願いを込めて【三重県鳥羽市 菅島灯台】

2019/09/19

三重県の東部、鳥羽マリンターミナルから定期船で訪れることができる菅島。人口700人弱で、豊饒な伊勢湾に面し海女の多い島として知られています。また「菅島の夏身の浦に寄する波間も置きて吾が思はなくに」と万葉集にも詠まれたとされる歴史を有します。

島の東端「菅島灯台」は菅島漁港から遊歩道を歩いて20分ほどの場所にあります。

高さ9.7mと小ぶりで愛らしく、レンガ造りの灯台としては日本最古。

恋人同士の関係はレンガを積むように一つ一つ着実に積み重ねて育むもの。そんな思いを積み重ねたレンガになぞらえそうな菅島灯台は、2018年に「恋する灯台」に認定されました。

「恋する灯台」認定理由でも触れられているのが、周辺で咲く花々。灯台敷地では真冬、白い可憐なスイセンがき、島の最高峰・大山山頂に茂る紅ツゲの鮮やかさは、まさに“冬の紅葉”。初夏には灯台の下でしっとりと花を開かせるアジサイを眺めることもできます。美しい島の灯台散策は、2人が恋する時間をじっくり積み重ねるのに最適です。

美しい灯台周りの風景を、そして“灯台からの風景”も一緒に楽しんでもらいたい。そんな願いから、島が活気に満ち溢れる催し「しろんご祭り」(7月13日)に併せて、菅島灯台が一般公開されました。

(写真は2017年の様子)

「しろんご祭り」は、海女のみなさんが白浜(通称:しろんご浜)と呼ばれる浜で行う祭事です、灯台から北側に位置する白髭神社に「まねき鮑(あわび)」と呼ばれる雌雄つがいのアワビを奉納し、海の安全と豊漁を祈ります。数百年を超える伝統を有するお祭りでもあります。

禁漁区のしろんご浜はこの日のみ漁が許されま、由緒ある海へ海女のみなさんが一斉に繰り出します。最初に「まねき鮑」をとった海女は「海女頭」として人々から尊敬され、豊漁が約束されると言われています。

お祭りでは海の幸が見学者にも振る舞われることもあり、島内は多くの人で賑い、菅島灯台にも島や地元のみならず「恋する灯台」から望む景色を体感しようと県内外からも多くの人が訪れます!

雌雄つがいのアワビを捧げる神事の日に訪れる菅島灯台は、恋する2人の末永い幸せを約束する…。どっしりしたフォルムも相まって、そんな気持ちをより強く抱かせてくれます。

万葉集の和歌には「菅島に寄せる波のように、あなたへ恋焦がれる」という意が込められていると伝えられています。この島を、菅島灯台を訪れ2人で語り合う時間は、互いの想いを募らせるひとときとなるはずです。