夢は灯台を「○○ること」!灯台が大好きな小学生・小林くんを訪ねてきました
2024/10/15普段から「灯台」の話題やニュースをチェックしている「海と灯台プロジェクト」事務局。ある日、X(旧Twitter)の投稿で、周囲から「灯台博士」と呼ばれるほど灯台に詳しい小学生がいることを知りました。
博識な子どもたちが登場するテレビ番組『博士ちゃん』を見ていると、ありとあらゆる分野に大人顔負けの知識を持つ「子ども博士」がいるのだなと感じますが、「子ども灯台博士」は珍しいかも。
ぜひ直接お会いして、その博識ぶりと灯台愛にふれてみたい!と思い立ち、灯台博士のお宅を訪ねてきました。
灯台を好きになったきっかけは……
玄関でいきなり出迎えてくれた出雲日御碕灯台(島根県出雲市)。石造りの塔体の表現と、まばゆく輝く灯室の完成度が高いですね。
この作品を作ったのはもちろん、「灯台博士」こと小林慧大(けいた)くん。小学5年生。
そもそも灯台を好きになったきっかけは、福岡県に住んでいた時に家族で角島灯台を訪ねたことだったそう。
ヨーロッパの古城を思わせるような古色蒼然としたたたずまいと、高さ約30mの塔体を見上げた時の圧倒的な存在感。慧大くんが一目で灯台に魅入られたのも分かるような気がします。
灯台、上から見るか?横から見るか?
さて、ひと口に「灯台ファン」「灯台好き」と言っても、幅が広いのがこの世界(?)。灯台の歴史や成り立ちに興味がある人もいれば、建築された年代やその場所によって異なる建材や工法に注目する人も。「灯台のレンズが特に好き」という人もいますし、地形学や地質学、地政学的な観点から「灯台がなぜそこにあるのか」にアプローチする人もいます。
前置きが長くなりましたが、慧大くんは特に「建築物としての灯台」に関心があるそう。
見せてくれたのは、さまざまな灯台の「横から見た形状」と「真上から見た形状」、立地している場所などをまとめた灯台ノート。どうしても灯台は「下から見上げるもの」との固定概念があったので、真上から見るのはとても新鮮な視点だと感じました。
最近は、お母さまに灯台の名前を出題してもらい、何も見ずに横から見た絵と真上からの絵を描くというチャレンジをして楽しんでいるとのこと。ということは、ひとつひとつの灯台の形状をたくさん記憶しているということですね。すごい!
そんな慧大くんに、日本のおもな灯台の中で形がまったく同じ灯台があるか尋ねてみたところ、「ないと思う」とのお答え。「形が似ている灯台はあるけど、踊り場やガラス部分など、よく見たら違いがある」と教えてくれました。
イベント出展の経験も
豊富な灯台の知識を活かして、地域のイベントに「灯台クイズ屋」として出展したことも。
正解した人にお菓子をプレゼントしたそうですが、上段真ん中の問題を見ると「日本で2番目に小さな灯台は何mでしょうか。(1)6.9m(2)3m(3)15.3m」となっています。……超難問……。
公益社団法人燈光会が公開している灯台ペーパークラフト作りにもハマっており、これまでで200基以上を制作したそう。その一部を見せていただきました。
押し入れの段ボール箱の中には、まだまだたくさんの灯台ペーパークラフトが。
作っているうちにどんどん上達しているそうで、初期に作った灯台ペーパークラフトを今になって見ると、出来に納得できないこともあるのだとか。そんな時は作品をつぶし、また新たに一から作ることにしています。陶芸家みたいです。でも、一番最初に作った角島灯台は思い出として残しているそう。
さらに、自身の作品を展示する「灯台ペーパークラフト展覧会」をこれまでに4度開催。
ただ並べるのではなく、日本列島の形を描いた上に作品を配置し、日本のどこにどんな形状の灯台があるか視覚的に分かるように工夫しています。
本当に広い体育館のような場所で、巨大な日本地図に何百基もの灯台ペーパークラフトを立てたら楽しそうだな、とそんな妄想も浮かんできます。
灯台を利活用するだけでなく……
慧大くんの夢は、「灯台ホテルをつくる」こと。現在、国内の複数の灯台で、旧官舎や灯台隣接地を活用する「灯台ホテル構想」が検討されていることは慧大くんも知っていますが、彼が目指すのは「灯台そのものに泊まれる灯台ホテル」。灯台の横にレストランも作り、灯台の地階もしくは地下には貨物列車を引き込んでレストランで使う食材などを調達する構想を描いているそうで、現時点での平面図も見せてくれました(感心のあまり、写真を撮るのを忘れてしまいました)。既存の灯台でこの構想を実現するのは難しいとも考えているそうで、「新しい灯台を自分で建てたい」とも。夢が広がりますね。
「突然灯台に飽きてもいいし、その時々で興味のあることを追求して、好きな道に進んでくれたら」と慧大くんを温かく見守っているご両親の姿勢も素敵でした。もしご縁があったら、いつか慧大くんと一緒に灯台に関わる何かの取り組みができたらと願っています。
写真・文 佐々木康弘