“海風トラベラー”と“灯台時間”で描く新しい旅のかたち 「海と灯台サミット2025」を開催しました

2025/10/29

日本財団「海と灯台プロジェクト」を運営する一般社団法人 海洋文化創造フォーラムは、2025年10月20日(月)と21日(火)の2日間、TOKYO FMホール(東京都千代田区)にて「海と灯台サミット2025」を開催しました。

「旅と灯台」をテーマに、研究者や学識経験者が灯台の価値を多角的に議論する学術会議、クイズプレーヤー・伊沢拓司さんをはじめ多彩な識者が“灯台時間”を語る「海と灯台サミット シンポジウム」、そして全国13団体による灯台利活用モデル事業の中間報告会が行われ、灯台を通じて地域・人・海の新しい関係を描く2日間となりました。

伊沢拓司と6人の有識者が「灯台時間」の謎に迫るシンポジウム

海と灯台サミットのメインプログラム「シンポジウム」は3部構成。日本財団・海野常務と伊沢拓司さんによるオープニングトークに続き、伊沢さんと6人の識者がそれぞれの専門分野から「旅と灯台」について考える2つのトークセッションを行いました。

オープニングトーク「海風が導く新しい旅のかたち ― 灯台体験アップデート論」

オープニングトークでは、伊沢拓司さんと灯台との“意外な関係”が明らかに。伊沢さんは「ここ数年では出雲日御碕灯台や潮岬灯台に行きました。実は、結構灯台が好きなんですよ」と笑顔で語り、会場を驚かせました。さらに「もともと海岸や岬の地形が好きで、北海道をよく巡っていました。海岸線を歩くと灯台に出会うことも多く、こんな場所から遠くまで見渡せたら気持ちがいいなと感じます。僕、灯台側の人間かもしれないです」と続け、会場に温かな笑いと共感が広がりました。

続いて海野常務は、全国1万人を対象に行った調査から「52%の人が灯台を訪れた経験があり、48%は一度も行ったことがない」というデータを紹介。「まだこの半分の人に、灯台の魅力を届ける余地がある」指摘し、「どうすれば『行ってみたい』と思ってもらえるか、今日はそのヒントを探りたい」と期待を込めました。

続けて海野常務は、クイズ王で知られる伊沢さんに向けて「答えのないクイズ」を出題。「灯台が東京ディズニーランドに勝っているところを3つ挙げてください」との問いに、伊沢さんは間髪入れずに「入るためのお金が比較的安い」「あまり待たない」「海上交通の役に立っている」と軽妙に回答し、会場を沸かせました。

続く第2問「灯台を思わず行きたくなる場所にするには?」に対し、伊沢さんは「最近は“そこにしかないもの”を求めて旅する人が多い。普段人があまり来ていないところを逆手に取り、灯台を『ここにしかないプレミアムな体験ができる場所』として宣伝できれば、もっと人が集まると思う」と語りました。

当意即妙に「答えのないクイズ」に答えていく伊沢拓司さん

さらに第3問「何度も行きたくなる灯台の条件とは?」では、北海道・サロマ湖にある小さな灯台の思い出を紹介した伊沢さん。「何の説明文もなく名前すら分からないけれど、ここにしかない体験がそこにある。あの気持ちをもう一度味わいたくて、2度3度と行ってしまう」と話し、「地域や地形に依存する部分もあるが、見せ方などを工夫すれば、(多くの灯台で)ここにしかない体験を作れるのでは」と指摘。「“灯台かくあるべし”よりも“この土地はかくあるべし”というマクロな視点」で地域の体験をデザインすることが大切であると述べました。

伊沢さんの見事な回答を受け、海野常務は旅行のスタイルが団体から少人数や個人へ、消費型から体験型へ変化し、“移動する時間そのもの”を価値として楽しむ人が増えていることを指摘。自分でハンドルを握り、バイクや車で海沿いを走りながら、青い空・白い波・潮騒や潮風を感じる道のり、移動体験そのものを楽しむ人たちを指す言葉として『海風トラベラー』という新たなカテゴライズを提案しました。

伊沢さんは「僕、結構それかもしれない」と応じ、自分で車を借りて海沿いを目指す旅を何度もしていると語りました。続けて、「名前がないような場所を訪ねてその景色を楽しんだり、磯の音を聞いていいなと思ったりするんです。そういう意味では、自分は『海風トラベラー』なのかもしれないと、初めて自認しました」と述べると、会場に大きなうなずきが広がりました。


「灯台は私たちに“考える旅”を与えてくれる存在」と話す海野光行常務