【貴重映像】恵山岬灯台、新LED光源が起動する瞬間 ~ 進化しつづける灯台が、今日も海の安全を支える

2026/02/12

2026年2月3日(火)、北海道函館市にある恵山岬灯台の光源が、従来の電球から最新のLEDへと換装されました。
この工事は、第一管区海上保安本部による航路標識整備事業の一環として実施されたものです。

今回導入されたLED光源は、海上保安庁が航路標識用としてメーカーと共同開発した最新機器です。国内では3例目、北海道内では初めての導入となります。

 

【貴重映像|LEDが“変形”して点灯する瞬間】

今回、「海と灯台プロジェクト」事務局は、恵山岬灯台を管理している函館海上保安部の協力を得て、換装されたLED機器の動画および写真の撮影を行いました。

新しいLED光源は、日中は太陽光から機器を守るため、カバーで覆われています。周囲が暗くなるとセンサーが反応し、まずカバーが下がり、その後に灯火が点灯します。

まるでロボットが変形するかのような動きで、思わず見入ってしまいました。灯台の「点灯」という日常の風景の中に、確かな技術の進化が感じられます。

恵山岬灯台の新しい光源、LED(LZL-1)

 

失われた「エメラルドタイム」と、新たな光


これまで恵山岬灯台では、光源にメタルハライドランプが使用されてきました。
点灯直後のわずかな時間、淡い緑色の光を放つことから、この瞬間は「エメラルドタイム」と呼ばれ、灯台ファンを魅了してきました。

今回のLED化により、このエメラルドタイムは見られなくなりました。しかしそれは、灯台が役目を終えたということではありません。

灯台はいつの時代も、その時点で最も信頼できる技術を取り入れながら、船の安全を守ってきました。光の色や仕組みが変わっても、その使命は変わりません。

▲光源にメタルハライドランプが使われていた頃の、淡い緑色の光(2023年撮影)

▲新LED光源の光。なお、恵山岬灯台は2024年に外壁改修も実施。大海原や空とのコントラストが美しい白亜の灯台です

 

大型灯台のLED化が難しかった理由

光源のLED化は、1989年から全国の小型灯台で進められてきました。一方、恵山岬灯台のような大型灯台では、長らく導入が見送られてきた経緯があります。

理由は、発熱と冷却の問題です。高出力のLEDは熱を持ちやすく、従来は大きな放熱板が必要でした。そのため、歴史的価値の高いフレネルレンズとの併用が難しかったのです。

今回導入された新型LED機器は、エネルギー効率の向上により、フレネルレンズと併用可能なLED光源として実用化されました。レンズはそのままに、光源だけを進化させる。これは、灯台の歴史と技術の両方を尊重した選択でもあります。

恵山岬灯台の新光源とフレネルレンズ。灯台の光を遠くまで届けるため19世紀にフランスで発明されたフレネルレンズは、現在、製造技術が途絶えたため生産できない貴重なものです。今回新たにLED機器を開発したことにより、この歴史が詰まったレンズの継続使用が可能になりました

 

日本海の東端で、光り続ける灯台「恵山岬灯台」

恵山岬は、津軽海峡の東口に位置し、日本海の東端ともされる重要な地点です。
恵山岬灯台は、1890(明治23)年11月1日に初点灯しました。

北海道庁設置後、海運航路の早期整備が求められる中で建設され、130年以上にわたり、この海域を航行する船を見守り続けています。

進化は、海の安全のために

島国である日本には、全国に5000基以上の航路標識が設置されています(うち灯台は約3100基)。その老朽化が進む中、限られた人員で維持管理を行うためには、超寿命かつ省電力な新技術の導入が欠かせません。

今回の換装により、恵山岬灯台の性能は大きく向上しました。

電球の寿命が約1年半であるのに対し、LEDは約5年と長寿命化。
また、これまでは遮光シャッターの回転によって明暗を表現していましたが、LEDは光源自体が点滅するため、よりくっきりとした明暗が生まれます。

これにより、機器の信頼性と灯火の視認性が向上し、船舶交通のさらなる安全確保に貢献します。

島国である日本には、約3100基の灯台が。日夜、その運用やメンテナンスに取り組む人々のおかげで、私たちの暮らしや仕事が成り立っている

 

国内でLED化された大型灯台(2026年2月現在)

・剱埼灯台(神奈川県三浦市/2025年3月・国内初)
・部埼灯台(福岡県北九州市/2026年1月)
・恵山岬灯台(北海道函館市/2026年2月)

なお、現在も全国には、光源にメタルハライドランプを使用する大型灯台が残っています。もし機会があれば、今のうちにぜひ、それらの大型灯台を訪れてみてください。そこには、次の時代へ向かう直前の灯台が放つ、静かで美しい一瞬の光があります。
参考記事リンク:展望を楽しめる灯台リスト

▲野島埼灯台(千葉県南房総市)