編集長がゆく! 編集長大ピンチ!まさか角田岬灯台で迷子!?

2020/02/18

不動まゆう灯台現地レポート

新潟県 角田岬灯台

いわゆる「3度のメシより灯台が好き」なマニアが綴る灯台レポート。灯台で「見て」「感じて」「味わった」ことをウンチクと共に伝える。

それは1月下旬のこと。

予約しておいたタクシーに乗り込もうとすると、「あれ、お一人ですか?」と尋ねられた。バックミラー越しに 「角田岬にどんな用事が?」 と探るような視線を感じる。

よくあることだ。女がひとりで岬へむかう。良からぬことを考えているのではないかと心配してくれているのだ。そこで勤めて明るく応える。

「あ、わたし灯台が大好きで!角田岬灯台の写真を撮りに来たんですよ!もう10年以上も灯台にのめりこんでいましてね!今日は東京からはりきって朝イチの新幹線できました!いやぁ新潟ってやっぱり寒いですねぇ。あ、でもこの寒さが新潟っぽくていいなぁ!なんてね」

「……」

しまった。とばしすぎた…。安心させるために必死でテンション高くしたら、まくし立てるような語調になってしまった。

「今年は随分あったかいですけどね」

少し間を開けて、内容とは逆のクールな返事がかえってきた。

私が降り立った越後曽根駅は、新潟駅から越後線に乗って約45分。

目的の角田岬まではタクシーで15分だ。事前に予約をしておいたので、電車の時刻に合わせて待っていてくれた。

車を走らせてから10分ほどすると、窓からみえるロッジ風の建物を指さして教えてくれる。

「ここにワイナリーがあるんですよ。使っているブドウもこの辺のもので。人気があって、ここにはよくお客さんを乗せてくるんですけどね…」

「~けどね」の後に続く無言に、「ここまでは来るけど、この時期に岬まで行く人は珍しい」という空気を感じ取った。

そうこうしていると岬の駐車場に停車した。料金は片道3000円ほど。30分後に迎えにきてもらえるようお願いしたら、このまま待っていてくれるという。

きっと30分という中途半端な時間は、他のお客さんを乗せるわけにもいかなくて迷惑なんだろうな…と恐縮しつつ、「では、ちょっと写真撮ってきます!」と車を降りた。

駐車場から見上げると、すぐそこに灯台が見えた。アクセス最高!

曇り空だけど、ご機嫌で灯台を目指して階段を登っていく。

軽く息が切れるくらいで灯台に到着した。

写真映えする角度はどこだろう。アングルを探すことにする。

少し登ったところから見下ろすアングルは海の雄大さが感じられる。こんな景色を独り占めできるなんて贅沢だ。人のいない時期、最高じゃん!

あえて距離をとって、崖を強調するアングルもワイルドでカッコいい。

あ、あそこに階段がある。降りて崖下からも写してみよう。

崖を下りる階段の途中で、パタパタと雨が降り出した。時計を見るとそろそろタクシーとの約束の時間だ。

引き返そうとしたところで、下調べしておいた情報を思い出した。たしか崖下から駐車場に繋がっているトンネルがあるはずだ!

先に結論を言うと、私はこの単純な地形で迷う。赤い矢印の先がトンネルなのだが、雨で視界が悪く、勘違いした私は崖沿いを逆方向に歩いてしまったのだ。

あれ、なかなかトンネルが見つからないぞ。

時折波しぶきが足下まで及ぶ。

不安と焦る気持ちで前進していたが、振り返って灯台が見えなったことで間違っていることに気が付いた。

こんなに灯台から離れるはずはない。危ない。戻ろう。

本降りになった雨の中、崖沿いを半泣きで小走り。

灯台が再び見えた時、すこしだけ心の落ち着きを取り戻した。

あ、あそこにトンネルあるじゃん。

さっき認識できなかったトンネルが見えた。

よかった!と安堵したのも束の間。トンネルに飛び込んだら急に闇。暗さになれていない目には真っ暗に感じた。

「ぎゃーーーー!こーわーいーよーーーーーーーーー」

不安から安堵、そして恐怖。感情に振り回されて、叫びながらトンネルをダッシュ。

トンネルを抜けると、何もなかったかのようにタクシーが待っていてくれた。

「道を間違っちゃって…ハァハァ…」

待っていてくれた運転手さんにお礼と言い訳を言うと、「間違うような道、ありましたっけ?」と不思議そうだった。

シートを濡らしては申し訳ないと、おどおどしつつ濡れた衣服を拭いていると、「この時期の天気はこうなんです。今度は5月の天気のいい日に来てくださいよ」と言ってくれた。

迷惑で変な奴だと思ってるんだろうな、と落ち込んでいたため、私、またここに来てもいいの? と、なんだか泣きそうになるほど嬉しかった。

※皆さん、灯台を訪れるときは天候や道をシッカリ調べて、危険がないように安全第一で行動してください。私も気を付けます!!!(心に誓う)