「主演女優、監督、プロデューサーの出会いは雑賀崎灯台!」映画『紀州騎士(きしゅうでないとぉ!)』インタビュー(第2回)
2022/04/11和歌山県湯浅町のしょうゆ店「角長」を舞台に、人とうまく話せずにいじめられ、不登校を経験した主人公さやかが新聞記者となり、さまざまな人との交流の中で、周囲を癒し、人々を再生させていく成長物語が描かれる映画『紀州騎士(きしゅうでないとぉ!)』。第1回ではさやか役の七海薫子さん、中野広之監督、小林薫プロデューサーに映画制作までの道のりと、ロケ地としての灯台についてお話しいただきました。(第1回インタビューはこちらから)第2回となる本インタビューでは、七海さん、中野監督、小林プロデューサーの灯台の思い出を語っていただきました。
ーー映画には和歌山県の人気ロケ地でもある雑賀崎灯台と下津港の牛が首赤灯台、二つの灯台が登場します。みなさんは灯台にはどのような思い出がありますか?
七海薫子さん(以下、七海):和歌山県出身なので、灯台といえば雑賀崎灯台というくらい子どもの頃から知っているなじみのある灯台です。夕陽がとてもきれいで、コロナ禍でも多くの人が訪れている人気スポットです。灯台の上にのぼって見る景色がおすすめです。遮るものが何もなく、地平線に太陽が沈む様子を見るのが大好きでした。雑賀崎灯台は太陽と海の関わりを感じさせるシンボル的なイメージがあります。ここの海が大好きで、子どもの頃はよく泳いでいました。撮影でもよく使われる場所で、私も過去にデジタル写真集やDVDの撮影で利用したこともあります。子どもの頃、大人になってからとそれぞれに思い出があるので、とても思い入れのある場所です。本作では夕日のシーンは登場しないので、ぜひ実際に足を運んで美しい夕日を見てほしいです。
小林プロデューサー(以下、小林P):私は関東出身で8年ほど前に移住してきましたが、灯台と言えば雑賀崎灯台というくらいになじみがあります。7年前に和歌山県と縁を持った武道大会の開催地もこの雑賀崎灯台の近くでした。
七海:俳優の榎木孝明さん主催の武道大会が開催されました。雑賀崎灯台の目と鼻の先にある双子島荘に宿泊しました。
小林P:その武道大会で、七海さん、中野監督に出会いました。最初に会った場所が雑賀崎灯台の下になります(笑)。
ーー出会いから雑賀崎灯台に縁があったとは! それは映画に登場させない理由はないですね。
小林P:泊まりがけの稽古会の思い出とともに、穏やかな海の記憶が強く残っています。移住したばかりの時期で、海の色深さに感動したのを覚えています。雑賀崎灯台に登って、その美しさを実際に見てほしいです。
七海:今、思い出したのですが、カラオケ映像の撮影でも雑賀崎灯台はよく登場するイメージです。私も撮影で何度か来たような記憶が…。演歌との相性も良い気がします。
中野広之監督(以下、中野監督):灯台には最果ての地というイメージもあるので、演歌との相性はいいはずです。私は大学生時代に初めて和歌山を訪れたのですが、海に船と材木がいかだのようにたくさん浮かぶ光景を見たのがすごく印象に残っています(和歌山県下津港は木材船寄港地)。初めて見た光景で「最果てに来た」と感じた記憶もあります。
七海:和歌山県はとても広いので「たくさん移動したな」と感じても、まだまだ目的地についていないということも多く(笑)。なので、きっと中野監督もたくさん時間をかけて移動してたどり着いた場所に、船があって灯台があって「最果てだ!」と感じたのかもしれません。でも、全然本当の最果てではなく、例えば私の地元すさみ町から出発して那智の滝まで向かうとなると、かなりの時間がかかります。びっくりするくらい広くて、新幹線もないから、和歌山を網羅するにはとても時間がかかります。見どころがたくさんあるので、たっぷりと時間をかけて魅力を堪能してほしいです。
中野監督:大学生時代に見た光景のインパクトが強くて、会う人会う人に紹介したくらいでした。映像制作見習い時代に「和歌山県のロケ地と言えば、和歌山城と雑賀崎灯台」が浸透していることを知って、なるほどと思いました。映像制作に携わる前にアルバイトで漁師のお手伝いをしていました。水深を測ったりするのですが、海に乗って灯台を見る機会がありました。「海から見ないと灯台は分からない」と本来の役割に触れた気がして、海から見る機会があればいいのに…、と心から思った経験があります。あの感動が忘れられなくて、自分の子どもをイカ釣り漁船に乗せて、海に浮かぶ船から灯台を見せたこともあるくらいです。
小林P:私も海から見てみたいです。真っ暗な中、灯台の灯りがどのように見えるのか、体験したいです。私の中では灯台=故郷のシンボルというイメージが強く、本来の役割に触れる機会もないですし。
ーー海から見る灯台、素敵です。せっかく有名なロケ地・雑賀崎灯台がある和歌山県なので、ぜひ、次の和歌山県発のプロジェクトで、本来の役割を盛り込むのもおもしろそうです。
中野監督:かなりお金のかかるプロジェクトになりそうです(笑)。
七海:でも、前向きに考えたいと思います!
第3回では「地元発信の映画を作り続けていきたい」という熱い想いとともに、その取り組みにどのように灯台を組み込んでいくのか。今後の地元発信映画制作における灯台についてお話しいただきました。
取材:タナカシノブ
『紀州騎士(きしゅうでないとぉ!)』
原案:七海薫子
脚本・監督:中野広之
チーフプロデューサー:小林薫
主催者:文化庁 厚生労働省 和歌山県 和歌山県教育委員会
第36回国民文化祭、第21回全国障害者芸術・
キャスト:七海薫子 原田龍二 小西博之 工藤堅太郎