日本武尊の故事に由来する神火が石灯籠の常夜灯として今なお残る 【兵庫県神戸市東灘区 灘の一ツ火】
2023/03/311868(明治元)年11月1日(旧暦9月17日)に神奈川県横須賀市に日本初の洋式灯台「観音埼灯台」が起工されたことから、毎年11月1日は「灯台記念日」に制定されている。
兵庫県内には、設置位置の標高が274メートル(灯火標高284メートル9で日本一高い場所にある余部埼灯台(香美町)や、1971(明治4)年初点灯で洋式灯台としては日本で8番目に建設された江埼灯台(淡路市)などがあるが、もう1つの貴重な灯台が神戸市東灘区にある。保久良神社の境内にあって、古くから海を往来する人々の安全を見守ってきた「灘の一ツ火」と呼ばれる石灯籠がそれだ。
保久良神社宮司の暮部優さんは「そもそも古代祭祀場であったことから、神が降臨して、海が見える場所でかがり火を焚き、海上の安全を図っていたということです。日本武尊が九州の熊襲征伐の帰途、このあたりの沖で針路を見失った際に、参道に見えた明かりを頼りに無事に難波宮へ帰ることができたという故事もあります。現存している灯籠は1825(文政8)年に建設されたものです」と、その由来を説いた。
今は防火対策により自動点灯の電灯になっているが、以前は麓の子どもたちが当番制で毎日午後4時から5時に山へ登って火を点けていたという。それを体験した1人である道東新治さんは「小学1・2年生から高学年くらいまで火を点ける役をしていました。麓から歩いてくる間は誰にも会わないですし、時にはイノシシが走っていたりしたので、怖かったですね」と思い出を語る。
「先祖が200年ほど前から火を絶やさずにきたことはすごいことです」と道東さんが言うように、神社や地元の人たちが海に対する思いを受け継いできた「灘の一ツ火」は、これからも変わらず保久良山の頂上から海を見つめ続ける。
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