建築当初は停止信号として使われた特異な歴史を持つ四国最古の洋式灯台 【香川県坂出市 鍋島灯台】

2023/03/31

日本財団が海上保安庁との共催により11月1日の灯台記念日から11月8日までと設定している「海と灯台ウィーク」では、様々な取り組みを行っている。

瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ香川県坂出市の与島から防波堤でつながった小さな無人島、鍋島には、四国最古の洋式灯台がある。

鍋島灯台は1872(明治5)年に「日本の灯台の父」と呼ばれるイギリス人技師、リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計・監督により設置点灯され、以来150年間にわたって瀬戸内海の船の安全を守り続けている。白塗りの御影石が美しい石造りの灯台は、高さ9.8メートルで、その灯りは約20km先まで照らすことができる。

通常時は非公開だが、退息所の跡地である灯台前広場に植樹された枝垂れ桜が満開となる時期に合わせて4月に一般公開されるため、純白の灯台とピンクの桜とのコントラストが鮮やかな景色を楽しむことができる。ちなみに、登録指定文化財にも登録される退息所は、香川県高松市にある古い建築物をテーマにしたミュージアム「四国村」に1998(平成10)年に移設保存されている。

 

坂出市役所与島出張所の所長を務める濱本敏広さんは、「灯台は本来、その光を見て場所を確認したり海を航行したりするものですが、ここは建設された当初、夜間航行する船舶の停泊地までの目標に使用して、夜明けを待って航行するための停止信号として使われていました」と、島が多く海流も複雑な瀬戸内海ならではの事情があったことを明かす。

鍋島灯台は、その歴史的、文化財的価値から2022(令和4)年12月12日に、国の重要文化財に指定されている。「灯台を見ることで安全に航行できる、その重要な役割を150年間も続けてこられたことは非常に価値のあることだと思います」と濱本さんもあらためて実感していた。

 

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