日本有数の歴史ある灯台を、周辺環境も含めて観光資源として活用する 【長崎県長崎市 伊王島灯台】

2023/03/31

九州初の洋式灯台として1871(明治4)年に初点灯した伊王島灯台は、1866(慶應2)年に江戸幕府が西欧4ヶ国(アメリカ、イギリス、フランス、オランダ)との間に締結した江戸条約に基づいて設置された全国8ヶ所のいわゆる「条約灯台」のうちの1つ。

長崎海上保安部交通課の大枝繁さんは、「船に乗っている人から見ると灯台の灯りは本当に身近なものであるとともに、帰って来たという安心感を与えるものです」と、灯台の役割について話す。

  

伊王島灯台は原爆の爆風で被害を受けるなどして現在の建物は3代目となっているが、およそ150年の長きにわたって長崎の海を照らし続けている。空と海の青い色に映える白亜の伊王島灯台の六角形の姿は、訪れる人の目を楽しませる。

美しい外観とは裏腹になかなか見ることのできない灯台の内部だが、2022年には11月1日の「灯台記念日」に合わせて一般公開が行われた。「レンズが回転していて10秒に1回、光が船に向かって当たるような作りになっています。現存している灯台はほとんどLEDに変わっていますが、フレネルレンズという特殊な作り方の外国製のレンズを使用しています」と解説する大枝さん。伊王島灯台のフレネルレンズは1914(大正3)年にフランスで作られたものを今でも使用している。

灯台の内部から外の景色を見ることができるのも、一般公開日だけの特別の体験だ。「長崎港に向けて走らせる船のための目印になっていて、反対側は軍艦島まで見えます」という眺望には来場客も大満足の様子だった。また、灯台を前に結婚式の記念撮影に訪れるカップルの姿もあり、風光明媚な景観のよさを観光資源として捉え、灯台の魅力を広めていこうという気運も高まっている。

さらに、灯台までの遊歩道沿いにはセルフサービス式のカフェ「岬カフェ」が3年前にオープンしており、伊王島の宿泊施設の利用者は無料で、宿泊客以外は1杯100円で利用できる。敷地内にはブランコが設置されており子ども連れも楽しめるほか、時間によって様々な表情を見せる灯台の景色はSNS映えのスポットとしても人気だ。

「灯台は自然と一体となって、船の安全航海のために作られたという経緯があります。灯台に来て、普段見ることができない景色を灯台の目線から見ることで感動してもらえれば」と大枝さんは語る。無人島を含めると約600もの島々を持つ海洋県である長崎県にとって、海の安全を守る灯台は欠かせない存在だ。一方で、灯台を新たな観光資源として活用しようという動きも活発になってきており、その可能性にはますます注目が集まっている。

 

▼応援動画もあわせてぜひチェックしてみてください。