灯台の活用が地域交流復活のカギに「灯台 島マルシェ&竹灯りイベント」【広島県三原市 佐木島灯台】
2023/05/12山陽新幹線「こだま」が停車する広島県三原市から高速船で約13分、瀬戸内海に浮かぶ小さな島「佐木島」。この島の北端にある佐木島灯台で2023年4月1日、住民有志が企画した「灯台 島マルシェ」が開催されました。
瀬戸内海に浮かぶ島々と本土を結ぶフェリーの安全確保などを目的に、1955年に初点灯した佐木島灯台。フェリーが発着する港からほど近い小高い岬の上に立つ、高さ6.3mの小さな灯台です。2017年には、日本ロマンチスト協会が選ぶ「恋する灯台」に認定されました。
ところが、年月が経つうちに灯台へ向かう遊歩道にはいつしか雑木や竹が生い茂り、さらに道の一部が崩れていたり滑りやすかったりと、近付きがたい状況になっていました。
そこで、2022年4月から同島で暮らす地域おこし協力隊の中村淳さんが呼び掛け人となり、「恋する灯台」をもう一度よみがえらせるべく、1月から整備を進めてきました。島民有志や建設会社がボランティアとして参加し、灯台の周囲や遊歩道に茂っていた木や竹を伐採。遊歩道の危険な個所も補修し、鐘の付いたハート形のモニュメントを設置しました。灯台と瀬戸内海の風景をゆっくり眺められるよう、伐採した竹で作ったベンチも設置。色が落ち、コンクリートの灰色が見えていた灯台は、海上保安庁に依頼して白く塗りなおしてもらいました
満を持して迎えたイベント当日は、島内の飲食店やものづくり作家など9組が灯台の周囲に出店し、地元食材を使ったランチボックスやコーヒー、焼き菓子などを販売。眼下に広がる瀬戸内海の島々を眺めながらお茶がいただける野点も行い、開場前から途切れることなく来場者が訪れました。
島の竹を活用した竹炭グッズの販売や、竹を使ったランタン「竹灯り」作り体験も好評でした。
日没後は、灯台の周囲や灯台に至る遊歩道にたくさんの竹灯りを並べて灯す「竹灯りイベント」を開催。灯台の明かりと対岸の街灯りが空と海を照らし出す中、びっしりと並んだ竹灯りがぼんやり灯る幻想的な光景に、訪れた人から感嘆の声が。島外からもたくさんの人がフェリーに乗って訪れ、美しい光景を写真に収めていました。
「島民の高齢化に加えてコロナの影響もあり、近年は島でのイベント自体が少なくなっていた」と中村さん。「イベントをきっかけに地域交流が復活し、島外からわざわざ来てくれたお客さんも想像以上に多かった」と灯台活用の成果を語ってくれました。「今回だけのイベントに留まらず持続的な活動になれるよう、これからは島内での運営体制づくりにも取り組んでいきたい」と今後を見据えています。
写真提供:のぉ!佐木島っ
文:佐々木康弘