調査研究によって導かれた灯台のストーリー
北の“夜明け”を見守る灯台~鉄のまち室蘭の発展を支えた灯り~
室蘭は明治期から北海道の発展を支えた鉄のまち。
そこに貢献したのが、灯台と灯台守です。チキウ岬灯台守の息子であり、自身も灯台職員の宮崎氏は言います。
「『灯台の光が船の安全』と鉄を運ぶ船乗りたちに言われてきた。灯台はサービス業であると胸に刻み、灯台の灯りを守り続けてきた。」絶景だけではない、「灯台守」の物語がつまった灯台です。鉄のまちの数々の魅力と合わせて、それを築いた灯りを楽しめます。
事業概要
- 事業名
- 将来の事業活用に向けた北の灯台文化資源調査事業
- 実施団体名
- 北の灯台文化資源調査コンソーシアム
- 対象灯台
- チキウ岬灯台ほか(北海道室蘭市)
- 事業の背景と課題
- 室蘭市は周辺地域の登別や洞爺湖に人が流れてしまい、観光客の滞在時間が課題となっている。灯台も室蘭八景の一部ではあるものの、灯台と室蘭の魅力やつながりが十分に伝えられていない。
- 連携した団体等
- 宮崎信昭氏(元海保)、室蘭市役所観光課、室蘭観光協会、室蘭海上保安部、佐藤大輔氏(元じゃらん、元室蘭地域おこし協力隊)石狩市、白老町、小樽市、積丹町、小樽海上保安部
調査・研究概要
1.北海道5地域の6灯台の調査・自治体の活用意向調査
- ①石狩灯台、アヨロ鼻灯台、神威岬灯台、チキウ岬灯台、旧室蘭灯台、日和山灯台の現地調査
- ②関係者・専門家へのヒアリング (小樽海上保安部、室蘭海上保安部)
- ③5自治体への地域課題、活用意向のヒアリング
2.室蘭市チキウ岬灯台を目的地にしたツアー企画・実施
- ①室蘭市、観光協会、地元事業者との活用構想ワークショップ(全9回)
- ②チキウ岬灯台に住んでいた宮崎信昭氏(元海保)へのインタビュー
- ③チキウ岬灯台を目的地にした実証ツアーの実施(2家族6名参加)
- ④宿泊施設(トレーラーハウス)設置に向けたヤドカリ社との協議
3.旧室蘭灯台の現状と課題の把握、活用方法の模索
- ①旧室蘭灯台の現地調査、市との協議による現状課題の把握
- ②不動まゆう氏(灯台マニア)を招待しての活用方法ワークショップ
- ③室蘭海上保安部への灯台にまつわるエピソードインタビュー
- ③室蘭市、観光協会、地元事業者との活用構想ワークショップ(全3回)
調査研究・実証実験による成果
6灯台調査・意向が合致したのは室蘭
候補6灯台のうち2灯台でポテンシャルが明確に。他地域は活用意向がない、アイヌ関係の土地で活用が難しいということから今年度は2灯台に絞ることに。
海保との灯台活用に向けた合意形成
海保との現場確認、協議を重ね、航路標識団体の登録を前提とした灯台敷地の活用条件を確認。灯台敷地の活用の実現が見込める状態になった。
元灯台職員・宮崎氏を介した資源調査
8歳から8年間チキウ岬灯台で過ごし、海保職員としてもチキウ岬灯台保全を担った宮崎氏にインタビュー。灯台の知られざるストーリーが明らかとなった。
室蘭市内をめぐるツアーを開発、検証
一泊二日で室蘭の発展「夜明け」を体験するツアーを実施。ファミリー層をターゲットにチキウ岬および旧室蘭灯台を含む滞在コンテンツを造成した。
室蘭市役所と市有地利用協定締結予定
灯台付近での宿泊施設開設に向けて、市、海保、地元事業者と議論を重ねてきた。市とは、灯台隣地の市有地活用に賛同頂き、土地利用協定を締結する予定。
事業計画・運営体制案の確立
地域の観光プレーヤーおよび宿泊事業運営の実績を持つさとゆめ社との連携による運営体制案の確立。それに基づく事業計画案を作成した。
課題と今後の対策(案)
旧室蘭灯台のガイドツアー実施には、施設等の修繕に1千万円程度が必要
旧室蘭灯台は役目を終えた引退灯台で、施設等のメンテナンスが行われておらず、施設および灯台に至る通路の安全柵の改修には1千万円程度の費用が必要となることが予想される。この費用の工面が課題である。
旧室蘭灯台の改修について、土地と建物を所有する室蘭市と費用負担も含めて検討して利活用の可能性を探りたい。理解を得るためにも、室蘭市内にあるチキウ岬灯台の観光活用を図っていきたい。