調査研究によって導かれた灯台のストーリー
世界と日本、北海道と本州をつなぐ海の守り神
明治期の北海道開発において、津軽海峡を渡る海上輸送の重要拠点として、建設が切望された灯台。灯台が建つ恵山岬は、特に霧が濃く、多くの航海者を悩ませ、江戸時代、大黒屋光太夫を伴って通商交渉に訪れたラスクマンの航海を阻むなど、海の難所として知られてきました。そのため、早くに霧笛が設置された灯台です。以後、永い年月、北海道開発の資材運搬や道産品輸送の航路を守り、北海道の発展に大きく貢献した灯台です。
事業概要
- 事業名
- 「恵山岬灯台」を核とした函館東部エリア活性化事業
- 実施団体名
- 恵山岬灯台活用協議会
- 対象灯台
- 恵山岬灯台(北海道函館市)
- 事業の背景と課題
- 函館東部エリアは、人口減少や漁業の衰退などの課題を抱えています。エリア内にある恵山岬灯台は北海道の発展を支え「日本の灯台50選」に選ばれた灯台ですが、その価値は認知されておらず、訪問者も少ない状況です。
- 連携した団体等
- 函館市、函館海上保安部、ホテル恵風(灯台に隣接する公共施設)、建築士 山﨑徹氏、サウナ専門家 草彅洋平氏
調査・研究概要
1.恵山岬灯台の近代産業建築物としての価値に関する調査研究
- ①意識調査としての写真募集(恵山岬灯台Instagramフォトコンテスト
- ②現地調査(灯台及び周辺に関する情報収集、イメージ撮影)
- ③文献調査(灯台資料館所蔵資料・書籍・新聞等)
- ④ヒアリング調査 (研究者、海保職員、元灯台守、地域住民など10名)
- ⑤専門家視察による調査(不動まゆう氏、東工大 藤岡名誉教授)
- ⑥恵山岬灯台 認知度調査(市民200人、観光客100人)
- ⑦隣接ホテルへの「灯台ルーム」設置に関する専門家調査
2.恵山岬灯台活用事業の試験実施
- ①恵山岬灯台ガイドウォーク試験実施(のべ4回、26名参加)
- ②3灯台周遊バスツアー試験実施(のべ2回、13名参加)
- ③話題づくりイベント「灯台サウナ」実証実験(10名参加)
- ④Instagramフォトコンテスト入賞作品展を実施(市内2か所)
調査研究・実証実験による成果
130年間の知られざるストーリーを明らかに
調査を通じ、地域住民も知らなかった恵山岬灯台の歴史や、北海道開発への貢献、トリビアを明らかに。年間1000万PVの函館市観光サイトに記事掲載。
恵山岬灯台ウォーキングツアーを開発
30分間、ガイドが歩きながら12のフリップで恵山岬灯台を紹介するツアーを開発。灯台の役割はもちろん、周辺の地形や歴史も学べる充実した内容に。
市内3灯台を含む周遊ドライブコースを開発
恵山岬灯台、日浦沖灯台、汐首岬灯台と、世界遺産に選ばれた縄文遺跡等、函館東部エリアをめぐるコースを開発。灯台について学べるクイズ15問も作成。
日本初イベント「灯台サウナ」が話題に
灯台とサウナの意外な歴史的つながり、灯台バルコニーで「ととのう」非日常体験が話題を呼び、NHK、HBC、北海道新聞等がニュースに。
「恵山岬灯台に行ってみたい」が82%
市民アンケートで手ごたえ。恵山岬灯台に行ったことがない方のうち、「灯台の情報を読んで、行ってみたいと感じた」方の割合は82%!
フォトコンに120点、老舗バイク雑誌が注目
写真愛好家や市民から美しい灯台写真が多数寄せられ、写真展示会も好評。老舗バイク雑誌が「ダムの次は灯台だ!海岸線を走りたくなった」と記事に。
課題と今後の対策(案)
恵山岬灯台に対する認知度、興味関心は低い。
しかし、その魅力を知れば「行ってみたい」に。
◆市民向けアンケート「恵山岬灯台に行ったことがありますか」
→行ったことがある51% ない49%
◆隣接する市営ホテル宿泊者向けアンケート
「宿泊中に恵山岬灯台に行きますか(または既に行ったか)」
→行く(行った)40% 行かない60%
「恵山岬灯台の情報を読んだ後、行ってみたいと感じますか」
→行ってみたい82% 行きたくない18%
恵山岬灯台に関する情報発信が行われていない
本事業着手時、恵山岬灯台に関するパンフレットやポスターはなく、市公式観光情報サイトや観光パンフレットでの紹介も無し。徒歩5分の場所にある市営ホテルでも特に説明されていなかった。
恵山岬灯台周辺の敷地を利用する場合、3か所への使用申請が必要。
周辺敷地は海上保安庁と函館市が所有・管轄。さらに「恵山道立自然公園」として北海道渡島総合振興局が管理し、のべ3か所に対して事前の相談、申請書の提出をしなくてはならないため、手間と時間がかかることが判明したため今回は断念した。一方で、イベント参加者が灯台に登ることについては海保の協力をいただき実現。
天候や季節の影響大
恵山岬灯台周辺は風が強い。冬の吹雪の際には、近くへ行くのも困難に。ただし吹雪後、雪景色の中の灯台は幻想的である。
恵山岬灯台の魅力に関する情報発信
本事業では、調査研究の成果を記事に仕立て、函館市公式観光サイトに掲載した。しかし、もっと多くの情報や写真があるため恵山岬灯台をPRするための
・公式WEBサイト
・ポスター、パンフレット
の制作に取り組みたい。また、情報拡散のために、函館市東部エリアの飲食店や道の駅などと連携を図りたい。
隣接する函館市所有ホテルとの協働
恵山岬灯台から徒歩5分のところにあるホテルに泊まれば、朝・昼・晩と異なる灯台の姿を眺めることができ、また、天候が悪い場合にもすぐに移動可能である。市営ホテル内に灯台紹介コーナーを開設したり、ウォーキングガイドツアーの実施、灯台コラボメニューなどを企画し、ホテルにとっても集客につながるものとして協働していきたい。
函館市との連携強化
情報発信やイベント等にかかる費用負担や、実施協力について函館市からの協力が得られるよう連携を強化していきたい。
海上保安庁(函館海上保安部)との連携強化
2023年度、当会は航路標識協力団体への認定を目指し、函館海上保安部との連携を強化し、灯台および敷地の活用ができるよう働きかけていきたい。
関連リンク
- 恵山岬灯台活用協議会 公式ブログ
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