調査研究によって導かれた灯台のストーリー
100年間伊勢湾を見守り、今は恋人たちをも見守る灯台
大正10年、野間埼灯台は名古屋港改修工事の完成に合わせて初点灯しました。戦後、名古屋港は中京工業地帯の発展により日本一の貿易港になり、野間埼灯台は輸出で外貨を稼ぎ成長する日本経済を見守ってきた灯台とも言えます。平成に入った頃からは恋人たちが南京錠を掛けるスポットになり、今ではカップルの未来を照らす存在でもあります。
100周年を迎えた今、野間埼灯台は美浜町の観光の中心としてさらに進化していきます。
事業概要
- 事業名
- 野間埼灯台ポータル化プロジェクト
- 実施団体名
- 野間埼灯台ポータル化実行委員会
- 対象灯台
- 野間埼灯台(愛知県美浜町)
- 事業の背景と課題
- 以前は海水浴や潮干狩りで栄えていた知多半島南部。しかし、それを目的に来る観光客は減少しています。昨今観光スポットとして人気が出つつある灯台ですが、国道沿いの立地の良さが活かしきれていない状況にあります。
- 連携した団体等
- 美浜町、美浜町観光協会、美浜町商工会、(一社)美浜まちラボ、名古屋海上保安部、株式会社JTB、海と日本プロジェクトin愛知県実行委員会、世界コスプレ文化普及協会、日本福祉大学グループ エヌ・エフ・ユー
調査・研究概要
1.基盤作り
- ①灯台・灯台周辺の改修に向けた調査(土地所有者・管理者の明確化、現駐車場エリアを活用した施策の検討と計画案の作成)
- ②コンソーシアムの結成と運営(地方自治体・観光協会・地域活性有志団体・旅行会社などとの連携構築/全14回の会議等の実施)
- ③灯台独自サービスの企画・検証(灯台開放機会の強化、ウェディングフォト・ドローン撮影)
2.歴史・文化の継承のための取り組み
- ①灯台と海の物語の継承(漫画『野間埼灯台マガジン』の制作、周辺の歴史的施設との連携に向けた情報整理)
- ②灯台擬人化プロジェクト「燈の守り人」の活用準備(制作会社・声優との関係構築)
3.地域のポータル化
- ①既存観光地・飲食店・宿泊施設との連携に向けた情報整理(リストの作成)
- ②グッズ開発(海音貝を使った缶詰セット、灯台ロゴの焼印制作)、グッズ開発協力会社・工場の発掘(リスト作成)
- ③サイクルツーリズムの開発・実証実験(美浜町観光マップをデジタル化、「恋愛成就コース」を立案してツーリズムを試行)
調査研究・実証実験による成果
私有地の情報整理・改修計画の立案
灯台周辺の土地所有者・管理者を調査し、管理者から灯台前の駐車場活用の許可を取得。トイレの改修の他、テラス設置など賑わい創出に向け計画を立案。
ウェディングフォトのドローン撮影
ウェディングフォトで人気のある灯台だが、灯台に登ってのウェディングフォト撮影・ドローン撮影は初挑戦。灯台そのものを活用した新サービスを検証。
美浜町サイクルツーリズム実証実験
美浜町観光マップをデジタル化。1月27日、「恋愛成就サイクルコース」を学生8名が走行。コースの安全性、マップの操作性・視認性等を検証。
『野間埼灯台マガジン』の制作
灯台と海の物語を親しみやすくわかりやすく知ってもらうために漫画を制作。今後は地元小中学校に配布したり、道の駅などの観光スポットでの設置を予定。
美浜町・灯台ならではのグッズ開発
美浜町アヒージョと海音カレーの開発・試食会を行った他、灯台ロゴの焼印を制作し、様々な商品に試して今後の灯台商品の開発に向けた準備を実施。
来訪者へのアンケート調査の実施
11月5日灯台イベント時に209名にアンケートを実施。無料駐車場・休憩場所・綺麗なトイレ等インフラ設備の充実が求められていることが明らかに。
課題と今後の対策(案)
ビジターセンターの設置には、土地の問題が壁に
既存の土地や建物を活用できるかを確認するには、灯台周辺は、自治体や複数の私有地が混在しており、すぐに事業展開するのは難しいとわかった。
灯台の向かい側にある駐車場(※)を借りている方を仲間に迎え、活用できるスペースを確保。アンケート調査でも要望の高かった老朽化したトイレの改修の他、トレーラーハウスやテラスを設置し、賑わいを創出できる場所をつくっていきたい。(※)現状、駐車場は複数の私有地や自治体の土地になっている。
ウェディングフォト撮影サービスの実施は難しいと判断
「恋人たちの聖地」野間埼灯台には、ウェディングフォト撮影者が多く訪れるため、撮影サービスの実施を検討した。灯台前の広場や周辺のビーチは、国や自治体および複数の個人所有地が混在しており、土地利用の調整には時間が必要であること、また、他の観光客も非常に多いため、一定の場所を占有することになる撮影サービスは難しい。
現状ではウェディングフォトを撮りに訪れるカップルは自身でカメラマンを手配しており、当会でウェディングフォト撮影希望者と美浜町公認カメラマンをつなぐマッチングサイトを開発したい。また、カップルの利用も想定したうえで、灯台の向かい側の駐車場にトレーラーハウスやテラスの設置を検討したい。
安全面でサイクルツーリズムの実現は難しいことが判明
灯台を起点にしたサイクルツーリズムの実証実験を実施。その結果、路面や道路幅が自転車の通行に安全ではない箇所があったため、実現は難しいことがわかった。
車両や徒歩での移動を想定した「観光デジタルマップ」の制作を検討し、テーマ別にコースを設定して、灯台を中心とした観光ツールとしての活用を探りたい。