2022年度 新たな灯台利活用モデル事業

佐田岬灯台愛媛県伊方町

佐田岬半島の灯台周遊ルート開発による観光活性化

佐田岬灯台

調査研究によって導かれた灯台のストーリー

灯台守の記憶と想いを継承し、ふたたび海と人が交わる空間に

佐田岬灯台は、四国最西端、日本一細長い半島の先端に立つ灯台です。初点灯は大正7年で、その光は対岸の佐賀関(大分県)に達し、豊予海峡を往来する船舶の安全に貢献。海と人とをつないできました。
灯台守の一人、阿部富士男さんは「釣りと村の人々との交流、月と灯台のあかりの美しさ。灯台での暮らしには楽しみが満ちていた」と語ります。灯火がエメラルド色に輝く光のファンタジー、透明度が高い海での釣りやカヤック、Eバイクや渡船を使った灯台周遊体験。
学び、楽しみ、交わり…灯台をきっかけに今、新たな地域の未来が広がります。

佐田岬灯台

事業概要

事業名
佐田岬灯台エリア再開発プロジェクト
実施団体名
佐田岬灯台エリア再開発プロジェクト実行委員会
対象灯台
佐田岬灯台(愛媛県伊方町)
事業の背景と課題
「日本一細長い半島」であるがゆえに、各灯台までのアクセスに時間がかかり観光客の多くが佐田岬灯台への弾丸ツアーとなっている。佐田岬半島全体を周遊する観光ルートが無く、観光客の滞在時間が短い。
連携した団体等
伊方町、松山海上保安部、宇和島海上保安部、(一社)佐田岬観光公社、三崎高等学校、町見郷土館、(一社)佐田岬Sプロジェクト、道の駅伊方・きらら館、今治明徳短期大学、まりーな亭 他

調査・研究概要

1.伊方町内にある10の灯台調査

  1. 10の灯台を訪問し、それぞれのロケーションや観光資源としてのポテンシャルを調査。また、全ての灯台をドローン撮影。
  2. 灯台を管轄する松山海上保安部、宇和島海上保安部、また地域史研究の拠点である町見郷土館と連携し、各灯台に関する歴史資料を収集。

2.佐田岬灯台周辺での灯台アクティビティの実証実験

  1. 1日目:松山海上保安部協力によるエメラルドタイム(夕暮れの点灯時)、夜間の灯台内見学、旧官舎跡地でのグランピング、ディナー
  2. 2日目:灯台下にある旧畜養池を活用した釣り、クリアカヤックの体験。また、渡船を活用した海上からの荷物の輸送。

3.元灯台守・阿部富士男さんへのインタビュー収録

  1. 灯台守の職務や官舎での当時の暮らしなどインタビュー収録(約2h)を実施

4.Eバイクや渡船を活用した灯台周遊モニターツアー

  1. 観光資源としてのポテンシャルが見込める町内の灯台を周遊するEバイクなどを活用したモニターツアーを実施

調査研究・実証実験による成果

伊方町内にある10の灯台を調査

設置背景やロケーション、点灯様式など、10の灯台それぞれの特徴を押さえ、観光資源としての可能性を評価。ドローン空撮は2023年度新たにオープンする「佐田岬半島ミュージアム」での展示に活用。

エメラルドタイム~夜間の佐田岬灯台見学~

点灯したエメラルド色の灯が徐々に白色に変化する時間帯は格別(約1分間)。伊方町が佐田岬灯台の航路標識登録団体制度に認定。今後の活用に追い風。

旧官舎跡地を活用したグランピング

三崎高校生徒による草刈り・整地からスタート。灯台直下でこの上ないロケーション。現状、荷物の輸送やハード面整備(トイレ、シャワー)に課題を抱える。

旧畜養池を活用した釣り・クリアカヤック

佐田岬灯台ふもとにある旧畜養池内は波が穏やかで釣りやカヤックを安全に楽しめる。外海と繋がり潮通しが良く、泳いでいる魚が見えるくらい透明度が高い。

元灯台守・阿部富士男さんインタビュー

灯台守としての職務や灯台官舎での当時の暮らしなど、阿部さんのインタビューを2時間に渡り収録。短編をタウンミーティングで放映。今後、「佐田岬半島ミュージアム」での展示に活用予定。

Eバイクを活用した灯台周遊モニターツアー

観光資源としてのポテンシャルが見込める町内の灯台をEバイクなどを使って周遊。約20分かかる佐田岬灯台遊歩道を楽しめるガイドコンテンツの開発が必要。

ボランティアの協力を得て実証実験イベント準備の負担軽減

三崎高校の生徒に、グランピング場所の草刈りや整地にボランティアで協力していただき、イベント準備がスムーズに進めることができた。

課題と今後の対策(案)

キャンプ・グランピングに適した時期の見極め

今回のグランピング実証実験を実施した11月下旬は風が非常に強く、グランピングに適した時期ではなかった。過去には、畜養池周辺にある鉄製コンテナ(約2,200kg)が台風による波風にあおられて動いた事例もあった。

風が穏やかな春から初秋に再度実証実験を実施したい。また、風に対する設備についても検討したい。

物資の運搬方法

駐車場から灯台までは20分の山道で、人力での物資輸送は非常に労力がかかる。

今回は物資輸送に渡船を活用した。灯台直下の岸壁までは運べたが、積み下ろし後に高台にある旧官舎跡地まで荷揚げする必要がある。また、渡船は荒天時利用できないため、舗装された山道からの輸送に適した電動ネコ車などの導入を検討したい。

その他インフラ

電気は灯台まで通っているが外灯は少なく、灯台周辺の水道は1か所のみ。トイレは故障中で現在使用不可。

灯台周辺のバイオトイレは伊方町予算で2023年度GW前後に再整備予定。