調査研究によって導かれた灯台のストーリー
新たな観光の目的地として、海と地域を照らすパワースポット
出雲大社で知られる島根半島の西端に立つ、出雲日御碕灯台。
明治36年初点灯で、設計施工を全て日本人が手掛けた、日本一の高さを誇る石造灯台です。その建設は日御碕神社の宮司の働きかけによるもので、現在も毎年8月、神事「夕日の祭り」が行われています。
車で15分の場所にある情緒豊かな漁師町には、趣の異なる鷺浦灯台があります。2つの灯台を通じ、地域の歴史と文化にふれ、海とのつながりを感じることができます。
事業概要
- 事業名
- 出雲日御碕灯台まるごとテーマパークチャレンジ!1STアクション灯台TERRACE
- 実施団体名
- 日御碕・鷺浦灯台利活用プロジェクトコンソーシアム
- 対象灯台
- 出雲日御碕灯台・鷺浦灯台(島根県出雲市)
- 事業の背景と課題
- 年間600万人が訪れる出雲大社から程近い出雲日御碕灯台周辺は、日本ジオパークや日本遺産に登録されているにもかかわらず、商店街は空き家が目立ち、灯台を中心とした魅力的な観光資源が活かされていない。
- 連携した団体等
- 出雲市観光協会、出雲観光協会、日御碕ビジターセンター、日御碕土産物店組合
調査・研究概要
1.日御碕観光動態に関する調査(現状把握)
- 【実施日】2022年12月1日〜2023年1月22日
- 【目的】出雲日御碕灯台の認知度・来訪意向・満足度等の把握
- 【実施内容】
調査方法:観光客へのヒアリング(出雲大社・日御碕灯台の2カ所で実施)
調査内容:出雲日御碕の認知度、来訪意向、旅行日程、利用交通機関、訪問理由、出雲日御碕に対する感想・要望などを把握する。
2.出雲日御碕灯台・鷺浦まるごと灯台観光モニターツアー
- 【実施日】2023年1月14日〜15日
- 【目的】日御碕灯台及び点在する周辺観光地をツアー訪問・体験いただいたうえで、参加者から課題・改善策・アイデアなどの提言を集約
- 【実施内容】ツアー参加者:合計18名(招待参加者:4組7名/一般公募参加者:5組11名)
- 【ツアー内容】
1/14:出雲大社参拝、日御碕灯台(灯台町並み散策・カフェ)
宿泊先(界 出雲、民宿ことぶき、NIPPONIA)
1/15:鷺浦地区散策(伊奈西波神社参拝・灯台・藻塩作り体験)
日御碕灯台散策、ダイビングスクールAQUA工房(海底遺跡)
日御碕神社
※イベント動画の制作・発信を実施
調査研究・実証実験による成果
動態調査で観光意識の実態を把握
出雲大社日御碕観光動態調査を12月〜1月に実施した結果、日御碕灯台の満足度が95%だった一方、灯台を知らない人が73%にのぼることが判明した。
日御碕商店街の地元事業者の意識を確認
日御碕のセールスポイント等を調査した結果、ジオパークや神話、マリンアクティビティなど多くの魅力があることが判明した。一方、発信力不足が明らかになった。
「再度ツアーに参加したい」が6割
出雲日御碕灯台や鷺浦散策など観光モニター体験を通じたアンケートを調査した結果、ツアーに再度参加したいという声が6割だった。コラボ企画調査では神話との連携が多く、次いでジオ、夕日の順。
ツアーガイドの説明でツアーが充実!
ツアーの各スポットに配したツアーガイドにより、それぞれの背景や歴史・こぼれ話などを興味深く紹介し、観光に奥行きをもたらすものとしてツアー参加者の好評を得た。
日御碕周辺の活性化へのニーズ把握
多くの参加者から、カフェやショップが少なく物足らないとの意見があがった。商店街の活性化と遊歩道周辺の景観を楽しめるカフェを求める声を今後の観光振興に活かしたい。
灯台グルメ&スイーツのアイデア化
ツアー参加者にオリジナルメニュー「灯台パフェ」「灯台海鮮丼」を試食してもらった上で新グルメ案を聞いた。灯台オムライス、灯台パン、灯台イカ焼きなど様々なニーズがあることがわかった。
課題と今後の対策(案)
設備や天候などの外部要因
モニターツアーでは、水銀濃度の上昇により灯台に登ることができなかった。また、天候不良によりクルーズ船に乗船して海から灯台を眺める体験プログラムができなかった。設備トラブルや天候不良があった場合であっても、来訪者が満足できるようにする必要がある。
灯台敷地の資料館の展示や室内での体験プログラム開発、地元商店街でのチャレンジショップの実施など、天候に関係なく、灯台や地域の歴史と神話を楽しんでもらう 体験プログラムを検討・実施したい。
イベント実施には許可が必要
日御碕灯台エリアは日本ジオパークに認定されていて、イベントを実施するためには環境省や出雲市など行政機関の許可が必要となる。
行政機関から許可を得るには時間を要する場合もあるため、早い時期の実施計画を作成して提出する。
交通の便がよくないことが課題
出雲大社と日御碕灯台をつなぐ唯一の交通機関であるバスは一日5本のみであるため、イベントやツアーを実施する際には、特別便を運航する必要がある。
バス会社に特別便を運行してもらい、イベントやツアーの実施を計画していきたい。