2022年度 新たな灯台利活用モデル事業

沢崎鼻灯台ほか新潟県佐渡市

灯台体験プログラムの開発による島の観光活性化

沢崎鼻灯台

調査研究によって導かれた灯台のストーリー

壮大な地球の物語、そして人の営みを照らす希望の光

300万年前から続く火山活動により形成された佐渡島は、「海」からの隆起により誕生し、海域を含むすべてがジオパークに指定されている。
中世より、貴族・文化人の流刑地として順徳天皇をはじめ、世阿弥、日蓮上人などが流れ着き、能をはじめとする様々な芸能・文化は「海」を越えてもたらされた。江戸時代には金採掘と輸送、北前船の航路地として、「海」と関わる廻船業などで町・町人文化が発展。幕末の開港後は新潟港の補助港として「海」を介して国際的に重要な役割を果たす。
「海」から誕生し、「海」とともに現在に至る佐渡島において、悠久の大地に立ち「海」を介して世界とつながる航路を照らす灯台は、島の成り立ち、歴史、文化を紐解く重要なカギであり、人々の営みを照らす象徴として、未来を創る架け橋となりえる存在です。

沢崎鼻灯台

事業概要

事業名
佐渡の未来に光を灯す 歴史と文化と恵みをつなぐ観光コンテンツ開発「SADO灯ーともしびープロジェクト」
実施団体名
さど探求プロジェクト
対象灯台
沢崎鼻灯台(新潟県佐渡市)
事業の背景と課題
日本最古の鉄塔「姫埼灯台」をはじめ、多くの価値ある灯台を有する佐渡島。金山の世界遺産登録など今後の観光人口増加が期待される一方、担い手不足や限界集落など課題を抱え、魅力的な地域資源・産業・文化を次世代へつなぐ仕組みが必須。
連携した団体等
佐渡観光交流機構、佐渡ジオパーク推進協議会、佐渡市地域おこし協力隊、佐渡市役所小木行政サービスセンター、新潟海上保安部交通課、佐渡市世界文化遺産課、佐渡国小木民俗博物館学芸員、路地連新潟、新潟県観光協会 など

調査・研究概要

1.佐渡島内の灯台に関する調査研究

  1. 現地調査(灯台及び周辺観光資源について。写真・映像の撮影も)
  2. 佐渡島内の灯台についてヒアリング調査(新潟海上保安部職員、元灯台守)
  3. 灯台と地形・地質、歴史、文化との関連性についてヒアリング調査(ジオガイド、街歩きガイド、鼓童)

2.灯台利活用事業の試験実施

  1. 沢崎集落・松ヶ崎集落にてタウンミーティング実施・灯台の活用について意見交換
  2. 沢崎鼻灯台モニターツアー実施(大人9名、子ども4名参加)。地形・地質を学び、集落の食文化を体験、教育団体等の連携を見据えたモニタリングを実施。

調査研究・実証実験による成果

ジオパーク×灯台の可能性が広がる

島全体がジオパークに認定されている佐渡島。特徴ある海岸・地形は、灯台が建つべき理由として密接なつながりがあり、他地域でも横展開しやすい企画へ。

灯台×ジオ×食を楽しむツアーを開催

沢崎鼻灯台を起点に、ジオガイドと地形を生かした特産「岩のり」を楽しむツアーを開発。島内の親子や小学校教諭、他地域で活躍するジオガイド員等、計13名が参加。

継続化を見据えたガイド資料の整備

今後、沢崎集落で行われるジオガイド資料内に、灯台に関する説明資料を加え、継続的に灯台の魅力を発信する資料を整備。合わせて、小学生向けの灯台クイズなどを作成、学校行事の一環での活用を目指す。

地域に眠る灯台との縁を表出化

島に暮らす住民は少なからずとも、灯台との縁や親しみを抱いている。集落住民とかつての灯台守との思い出話を映像に残し、灯台とのつながりを表出化。集落の店舗や県の観光HPで放映予定。

「今後、他の灯台にも行ってみたい」92%

ツアー後に行ったアンケートで、参加者の90%以上の方が、“今後、他の灯台にもいってみたい”と回答!佐渡の灯台をつなぎ、次なる灯台へと探究心の連鎖へ!

企画検討のためのフィールドワークを実施

他主要灯台での撮影およびコンテンツ化に向けた検討会を実施。世界で活躍するアーティスト集団鼓童チームやジオガイドを束ね、佐渡の灯台利活用を軸に、地域活性化に向けた企画をブレスト。

課題と今後の対策(案)

地域の巻き込みに難点(島全域)

灯台の利活用を通じて、佐渡島の魅力的な地域資源・産業・文化を次世代へつなぐ仕組みづくりを目指している。
それには地域の方々との連携が必須と考えているが、実際に取り組みをはじめたところ、地域の歴史や文化、慣習に配慮した進め方が重要であり、かつ、灯台の観光資源としての価値に気づいていないケースが散見された。丁寧なコミュニケーションと実績づくりにより、地域一体で利活用の機運を高めていきたい。

佐渡の主要灯台である沢崎鼻灯台、鴻ノ瀬鼻灯台、弾埼灯台において、それぞれ地域に根差した観光コンテンツを検討。佐渡全域で活動している団体(ジオガイド推進協議会、地域おこし協力隊)や新潟県観光協会、観光の専門家など、島内外の関係者を巻き込み、客観的な視点からも灯台の観光価値に気づかせる活動と発信をもって、地元住民にアプローチしていく。

灯台周辺の安全対策が課題(沢崎鼻灯台)

今回実証実験を行い、観光価値のポテンシャルのある沢崎鼻灯台の周辺は崖や岩場が多く、危険なエリアとなっているが、柵の設置などの安全対策が整備されていない状況となっている。さらに、調査を進める中で、周辺の地権・土地管理者が、国(資料上は逓信省・大蔵省)、佐渡市、私道(個人所有)と区分が曖昧であり、安全柵など設置などの対策時に許認可対応が難航する可能性が高い。

地権者である国・行政・個人への権利確認を進め、灯台周辺の安全対策に関する環境整備について対策を検討したい。

灯台の柔軟な利活用への課題(島全域)

島内に海上保安庁が常駐しておらず、新潟県から随時、隊員を派遣してもらう必要がある為、柔軟な灯台の利活用が進めづらい。また、歴史や地勢によって性格の異なる灯台が複数存在し、それぞれが観光コンテンツとしてのポテンシャルが高いが、岬の先端に位置する灯台へは、市街地や島の玄関口である両津港からも距離が離れており、アクセスが容易ではない。

島内での灯台利活用の航路標識協力団体を立ち上げ、柔軟な観光運用コンテンツ化を目指す。また、「灯台の観光ブランディング」の強化を推進する中で、旅行業の取り扱いを持つ団体やDMO、宿泊施設等と連携し、両津港を起点とする灯台周遊バスツアーを検討・実施したい。