調査研究によって導かれた灯台のストーリー
世界との窓口!長崎最南端で往古から日本近代化まで導く希望の光
長崎半島最南端にあり東シナ海から世界との唯一の窓口だった長崎へ向かう最初の指標となる重要な灯台。
昭和7年点灯、設計は三浦忍、地元民も建設に尽力し心の拠り所に。樺島灯台公園と灯台資料館と共に親しまれている。
樺島は風待ち港として1500年代の西洋地図に記される海の要所で島が灯台となり日本近代化へ導いてきた。時代の最先端を走り歴史浪漫を抱く樺島から県内最大のフルネルレンズで希望の光を未来につないでいる。
事業概要
- 事業名
- 樺島灯台調査研究事業2022
- 実施団体名
- 灯台文化的価値探求プロジェクトin長崎県実行委員会
- 対象灯台
- 樺島灯台(長崎県長崎市)
- 事業の背景と課題
- 周辺地域は恐竜博物館や宿泊施設もでき観光客は増加した。しかし樺島灯台は歴史的重要な島、無料開放の灯台資料館、公園としても整備、灯台数日本一の長崎県で最大のレンズ所有であるが、認知度が低く訪れる人は少ないままである。
- 連携した団体等
- 長崎海上保安部、長崎のもざき恐竜パーク、長崎市役所南総合事務所野母崎地域センター、野母崎樺島地区コミュニティ連絡協議会、樺島地区連合自治会、Nomon長崎、三浦設計、扇精工コンサルタンツ等
調査・研究概要
1.灯台及び灯台資料館、周辺地域に関する調査
- ①現地調査(灯台及び周辺に関する情報収集・ドローン使用)
- ②ヒアリング調査・記録映像(海保職員、元灯台守、地域住民など40人)
- ③灯台・資料館の建物設計調査・3D図面化(三浦設計、長崎海上保安部等)
- ④樺島灯台認知度調査(恐竜パーク来場者200人、灯台訪問客250人)
- ⑤交通量調査(扇精光コンサルタンツ)
- ⑥資料・文献調査(長崎歴史文化博物館、日本二十六聖人記念館等)
- ⑦地域連携活用へむけた有識者調査
2.観光コンテンツ開発と実証実験イベントの実施
- ①電動自転車ツアー樺島灯台絶景RIDEを試験実施
- ②樺島灯台90周年祭りを開催
- ③樺島灯台を巡るデジタルスタンプラリーを試験実施
- ④樺島灯台元灯台守による歴史講話&灯台ツアー実施
- ⑤樺島灯台 絶景絶叫大会実施
- ⑥長崎半島活性化ミュージックビデオ連携
3.灯台資料館の利活用検討
- ①資料館で日本の夜明け灯台カフェを試験実施
- ②資料館で灯台100周年に向け10年後の手紙実施
調査研究・実証実験による成果
樺島灯台聞き取り・現地調査
樺島の歴史、灯台建設時の様子、灯台と地元の関わりなど有識者や文献から調査。灯台は島民の協力によって建てられ小学校の遠足地や校歌になるなど皆に親しまれてた。
樺島灯台アンケート・交通量調査実施
アンケートで灯台を知らない人は約6割に上ったが、灯台がある野母崎地区へは8割が年1~2回以上訪れる(内3割が月1回以上)。灯台訪問までのポテンシャルが高いことが判明。
灯台・資料館、灯台公園の3D図面化
有人勤務時代の退息所(現資料館)と灯台、公園全体を建築士により3Dスキャナーを使って図面化。資料館の改装など利活用の可能性を調べた。
電動自転車灯台ツアーを開発
長崎のもざき恐竜パークから樺島灯台まで往復20キロを電動自転車で地元ガイドと巡るエコツーリズムを開発。灯台内見学を実施。
樺島灯台デジタルスタンプラリー開発
樺島の歴史を紐解く灯台ウォーキングデジタルスタンプラリーを開発。島の寺院仏閣、パワースポットなど計12カ所にスポットを設置した。
樺島灯台90周年祭りを開催
地元に伝わる伝統芸能の披露や元灯台守の歴史講話など実施。資料館では10年後に開封するタイムカプセルにメッセージを集め、伝来の地で味わうカフェも初開催し賑わった。
課題と今後の対策(案)
水道などのインフラ設備
樺島灯台公園には水道が引かれておらずトイレも男女1カ所のみ、自動販売機もないため長時間滞在するのは難しい。
灯台資料館利活用イメージ図(カフェ&シアター)灯台と絶景を楽しんでもらおうと灯台資料館でカフェを試験実施。平日は、近隣の伊王島灯台をお手本に無人カフェを整備するとともに、週末中心には、地元のカフェが稼働することに前向きであったので「灯台カフェ」として「灯台資料館」で歴史に触れながら、あるいは絶景を眺めながら過ごせるカフェの本格運用の可能性を探りたい。今後、資料館でカフェやミニシネマなど交流の場になるイベントを仕掛けると同時にインフラ面についても行政と対応策を練っていく。
交通アクセス
樺島から灯台へたどり着く道は険しい。細い山道や民家の敷地のような場所、小学校横の小道を通るなど、外部から車で訪れるには難易度が高い。
灯台への道のりは、電動自転車など小回りが利く交通手段が適している。近隣の恐竜パークからの集客方法検討としても、電動自転車でのツアーを試験実施し、参加者からは好評だった。また樺島灯台を歩いて目指すデジタルスタンプラリーを試験実施したが山道を約40分かけて歩く人は少なかった。今後は海上からのアクセスを開発するとともに、交通整備への働きかけも行う。
獣害(イノシシ)
イノシシが灯台周辺を夜に行動しており、さらに、島民より多く生息しているかもしれない。天体観測、キャンプなどのアクティビティは危険な可能性あり。
夜間のイベントを行う場合は、キャンプは樺島灯台のフェンス内で行うことや、天体観測の場合は、展望台でおこなうなどの配慮をして実施の検討。長崎市科学館の協力ももらい実施したい。
認知度不足
地域住民のシンボルとはなっているが、観光スポットとしての認知度が低く訪れる人が少ない。
県内認知度向上部分は、地上波を中心にイメージ訴求をおこなっていき、全体認知数を上げていく。さらに、SNSも活用しながら、県内外へ幅広いターゲットへの訴求を広げていく。