2022年度 新たな灯台利活用モデル事業

長尾鼻灯台鳥取県鳥取市

高校生の地域学の授業に灯台プログラムを

長尾鼻灯台

調査研究によって導かれた灯台のストーリー

古代から続く人と海との歴史を伝え、未来を照らす

弥生時代の漁労や海上交易に関する遺物が多数出土し、江戸時代には北前船の寄港地として栄えた鳥取市青谷地区にある長尾鼻岬。
古代から日本各地はもちろん、大陸からも人やモノが集まり、文化が育まれた場所です。昭和2年に前身の「夏泊灯柱」が設置され、昭和28年、長尾鼻灯台が初点灯。日本海を行きかう船の安全航行を見守り、この地が海上交通の要衝であることを示す象徴として、若者や市民に、地域を学び、誇りをもつ格好の機会を提供します。

長尾鼻灯台

事業概要

事業名
青谷長尾鼻灯台利活用八良い(弥生)事業
実施団体名
鳥取市青谷地区振興プロジェクト実行委員会
対象灯台
長尾鼻灯台(鳥取県鳥取市)
事業の背景と課題
海にまつわる歴史トピックが多い青谷地区。2019年に北前船寄港地として日本遺産認定され、弥生時代の海上交易の遺物などを展示する施設が2023年秋に開館予定です。しかし、灯台については、地元住民の認知や関心が低く、訪問者も少ない状況です。
連携した団体等
鳥取県立青谷高校、海上保安庁、鳥取市青谷総合支所地域振興課、鳥取県弥生の王国推進課、すなばスポーツ、鳥取県自然体験塾、青谷磯釣り組合、株式会社skyer、日本海テレビ、鳥取市青谷地区振興プロジェクト実行委員会

調査・研究概要

1.長尾鼻灯台の地域のランドマークとしての価値に関する調査研究

  1. 地域に根差した学習としての青谷高校での授業(全9回実施)
  2. 現地調査(海上保安庁と連携した内部見学、展望エリア見学)
  3. 弥生文化とのかかわりを知る(鳥取県弥生王国推進課による授業)
  4. 海とつながってきた歴史を知る(鳥取市地域振興課による授業)
  5. 地域のにぎわいづくりのつどいでの地域住民への利活用提案

2.長尾鼻灯台活用事業の体系化

  1. 青谷高校の生徒から、授業を通じて「何を学んだか」をヒアリング
  2. 鳥取市出身のイラストレーター伊吹春香氏によるマンガ化(伊吹氏は自動車メーカーフィアットの広報実績もあり、近年は鳥取市や鳥取県の広報活動も多く地元の認知度が高い)
  3. 成果物を青谷高校、青谷中学、青谷小学校、ほか観光施設へ寄贈することで今期の調査結果を活用し地域に根差した学びを作る。

調査研究・実証実験による成果

青谷高校・海上保安庁と灯台授業

実際に地域で進められる地域学の授業と連携し、長尾鼻灯台を中心に海とつながってきた青谷の歴史を知る授業を構築。

鳥取県弥生の王国推進課と連携

青谷高校の地域学の授業と鳥取県の弥生の王国推進課を連携させ、地域で建設が進むかみじち史跡公園と灯台の関連を地域の学習に落とし込んだ。

まちづくりのつどいで灯台利活用を提案

青谷のまちづくりを考えるつどいに参加し、工芸品や食品だけではなく、「海とつながる文化・歴史」が財産だと再認識する。今後灯台と連携する視点も啓発した。

青谷高校の授業成果をマンガ化

高校生考案の内容を、イラストレーター伊吹氏がマンガ化。青谷高校、中学、小学に寄贈。授業での活用を予定。また観光施設で無料配布。

マンガ化を地元メディアで「情報発信」

青谷高校の授業にとどまっていた灯台の価値見直す学習の成果を地元メディアにより拡散。多くの人に灯台の存在や価値を発信。

デジタル版各種媒体で公開・活用促進

制作したマンガ冊子をデータ化。鳥取市、鳥取県、青谷町、海保のサイトで公開。各観光地・観光案内所で無料配布・ポスター設置により広く活用を促進した。

課題と今後の対策(案)

灯台が認知されていない

灯台が地元住民に認知されておらず、利活用の取り組みに対する意識が低い。「海や灯台があることは当たり前すぎて、特段、注目したことがなかった」という声も。

灯台周辺の環境整備のほか、灯台看板の設置や観光スポットとしての情報発信、灯台の一般開放イベントの実施について、自治体と協力して実施する体制をつくりたい。

灯台の魅力が発信されておらず、訪問する魅力が伝わっていない

灯台の敷地は普段閉鎖されていて、隣接する駐車場は釣り人の利用はあるものの、観光地としての整備は看板がある程度。灯台の魅力や存在価値を伝える情報が少ない。

灯台に隣接する駐車場に灯台をPRするモニュメントや、制作した灯台マンガのポスターを掲出し、灯台の魅力発信について検討したい。また、駐車場に事務所を持つ青谷磯釣り組合と連携し、灯台マンガの配布を行うなどの施策を検討したい。

地域の活性化につながる事業の広がりが課題

本事業では地元高校の授業と連携し、灯台を中心とした海とのかかわりのストーリーを漫画にすることで「学び」を生み、その学びを地域に発信できた。一方で、「弥生の文化」「北前船」などの歴史や、「和紙」「日本酒」などの特産品や産業、観光といかに絡めるかという点は十分な成果が出せなかった。地域活性化につなげるための課題である。

教育関係者の意見を聴取して、地元高校の授業で灯台プログラムの実施をブラッシュアップさせ、小中学校での実施も検討したい。また、地元事業者との灯台コラボ商品の開発や、キャンペーンの実施により灯台を軸に地域活性化を図る施策を検討したい。

その他の採択事業

生地鼻灯台

富山県黒部市

恵山岬灯台

北海道函館市