調査研究によって導かれた灯台のストーリー
灯台と漁師町の成り立ちがリンクする灯台の聖地
日本海に面した漁師町・生地における灯台の歴史は、室町時代にさかのぼります。「暴風で遭難しかけた漁船が神社の御神火を頼りに帰港できた」伝説があり、それにちなんだ「たいまつ祭り」が500年以上も催行。大正15年には鉄造の槍ヶ崎灯柱が設置され、昭和26年にはより遠くから灯火が見えるよう、漁師たちの請願により生地鼻灯台が建造されました。
灯台は、北洋漁業の船の安全航行を守って町の発展を支え、特に北海道から海を通じてもたらした昆布などは生活や文化にも大きく影響しました。
灯台の歴史と共に地域の海洋文化にふれることができる、灯台の聖地です。
事業概要
- 事業名
- 生地エリア魅力発掘プロジェクト
- 実施団体名
- 生地地区灯台利活用プロジェクト実行委員会
- 対象灯台
- 生地鼻灯台(富山県黒部市)
- 事業の背景と課題
- 灯台の鍵は地域に預けられているものの、地域内での活用や、観光スポットとのコラボが出来ていない。また、エリア内にある槍ヶ崎灯柱やたいまつ灯台、生地鼻灯台敷地内にある資料館と官舎倉庫跡が活用されていない。
- 連携した団体等
- 黒部市、黒部・宇奈月温泉観光局、黒部漁業協同組合、NIPPON TABERU TIMES、海上保安庁、株式会社さとゆめ、黒部まちづくり協議会、北洋の館、魚の駅生地、四十物昆布、飯澤醤油味噌店、皇国晴酒造、嶋倉鮮魚店 他
調査・研究概要
1.地域の物語を整理し、周遊ルートや「海と灯台の物語」のアウトプット作成に向けた調査やフィールドワークを実施
- ①地域の魅力発掘調査
- ②観光関係者等を招聘し、周遊ルート2つのフィールドワークを実施
2.宿泊施設の整備や、付帯施設(官舎の活用)に向けた計画作成
- ①エリア内のランドマークやキーマンを取材し、資料化
- ②宿泊施設のテーマやデザイン、官舎跡地のリニューアル計画について協議
3.自治体(市長)・市民・地元有識者(県議・市議)の巻き込み
- ①実行委員会や地元有識者による定期的な会議
- ②市長や市民とともにタウンミーティングを開催し、地域内のコンセンサスづくり
調査研究・実証実験による成果
生地の「海と灯台の物語」の情報収集と整理
地域内の各施設で保存されている灯台及び生地地区の海洋文化を表現した資料収集しデータ化。老舗昆布店・酒蔵など、生地地区の海洋文化を守り続けるキーマンを取材。情報収集と協力体制を構築。
観光関係者やターゲット層向けフィールドワーク
県内外から誘致をし、灯台を起点とした新しい周遊ルートやターゲット層・顧客単価などを検証するフィールドワークを実施。女性を中心とした県内外(東京・長野・新潟・富山)の19名が参加。
生地の海洋文化を学ぶ親子向けフィールドワーク
生地地区4家族15名に参加いただき、生地の漁業の歴史や魚さばき体験など漁村文化を体感する親子向けのフィールドワークを開催。
灯台周辺での宿泊施設整備計画テーマは“富山湾の漁師“になれる宿
生地鼻エリアの漁師町の文化体験を含む滞在体験型宿泊施設の整備計画を策定。コンテナハウス型で漁具などの暮らしの道具を用いた空間作りを計画。
灯台横の資料館(官舎跡)の整備計画(海洋文化体験施設の整備)
生地鼻灯台に隣接する官舎跡倉庫に貯蔵されている漁具や漁業資料を活用し、生地や富山の漁業が学べる海洋文化体験施設の整備計画を策定。
自治体・市民を巻き込んだタウンミーティングの実施
黒部市長をはじめ、地元議員・有識者・観光ガイド・住民など多様な職種、また年齢層も20代~70代と幅広い世代に参加いただき、灯台周辺での宿泊拠点の開設や周遊プランの整備について意見交換。
課題と今後の対策(案)
灯台と背景にある地域の文化が知られていない
県内や近隣県の人々に、生地鼻灯台の歴史や役割、この地域の漁村文化・海洋文化が認知されていないことがわかった。
地元の協議会が運営主体となり、宿泊施設・資料館を運営する方向で検討。運営は協議会で賄うが、建設費用は日本財団 海と灯台プロジェクトに支援いただきたい。
地域を周遊するためのツールや施策がない
この地域には、伝統的な漁具・漁法など、海洋文化を学べる場所が点在している。それらと灯台を含めた観光周遊コースの実現が集客や来訪者の満足度向上につながるが、現状、サポートするツールが存在しない。
観光音声コンテンツやレンタサイクルの設置等の整備など、周遊を楽しめるためのツールや施策を検討、実施したい。レンタサイクルの設置は自治体に費用負担を働きかける。
海辺で実施するフィールドワークは、季節や天候の影響を受けやすい
資料館の展示や室内体験プログラムの開発により、天候に関係なく、灯台や地域の海洋文化を伝えられるよう工夫したい。