博士(理学)・石川智氏が、尻屋埼灯台が例に「灯台×ジオツーリズム」を提案(全国灯台文化価値創造フォーラムより)

2020/01/30

2019年12月10日、灯台のある全国自治体が一堂に会し「全国灯台文化価値創造フォーラム」が開催されました。今回は博士(理学)・石川智氏が、尻屋埼灯台を例に「灯台×ジオツーリズム」を提案したプレゼンテーションについてご紹介します。

 

「さて突然ですがクイズです。波打ち際に立った時に見える水平線は、どのくらい先の距離にある海が見えているでしょうか?(※答え:約5km)」。自然地理学を専門とし、むつ市ジオパーク推進委員を務める石川氏は、冒頭にクイズを出題し、水平線と高さの関係について問いかけます。

さらに解釈を加えると、灯台の灯りを遠くまで届けるためには「灯台の位置を高くする」ことが重要で、そのためには「灯台を安定した地盤に建てること」、そして「しっかりとした設計・建築が必要」になるのだとか。

 

近年、日本では地震や台風、噴火などさまざまな自然災害が甚大な損害を与えており、石川氏は「地球上の日本の位置」や「大地の成り立ち」が原因であると指摘。

 

その一方で「四季が生まれ、地域差が出ることによってそれぞれの特色を備えた産物・名所ができる」と告げ、その具体例として、尻屋埼灯台の周辺地域の特色について説明を進めます。

尻屋崎の海域は津軽暖龍と沿岸親潮がぶつかる潮目であり、浅瀬もあるため座礁する船も多く、その難所を照らすため尻屋埼灯台が建設されました。そして灯台の建つ土台はマグマが固まった「閃緑岩」でできており、東西方向に切ると、断面は階段状の「海成段丘」になっているそう。

 

【尻屋埼灯台と周辺の環境が織り成す生態系】

太平洋側の浅瀬で日光を受け、コンブが発生

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コンブ漁で地域が潤う(※持続可能な漁業!)

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夏は北東の季節風「やませ」が吹いて、砂丘の砂を飛ばしコンブを枯らす。

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砂が流れないよう松林を植える

松林が放牧されている「寒立馬」の休み場になる。

「ジオパークではこのようなつながりを学び・楽しむために、ジオツーリズムとして紹介しています。尻屋埼灯台を見て、その土台を見て、地域の成り立ちを知って、下北地域を知ることができる。そうすることで下北の人々は郷土愛を醸成し、観光客には下北の良さを知ってもらえるのです」と石川氏は述べ、尻屋崎ではこうした“持続可能な社会”を作る取組を進めているといいます。

そして2016年に恋する灯台に認定されたことにより恋活事業が促進されたことや、ジオダイニングの取組が行われていることに触れ、最後はジオパークでのランニング&サイクリングイベントを提案し、発表を締めました。