島の南北にある2つの灯台をつなぐイベントで、人のつながりを作る【長崎県平戸市 大バエ鼻灯台・生月長瀬鼻灯台】
2023/12/22日本財団「海と日本プロジェクト」の一環である「新たな灯台利活用モデル事業」の助成を受けたイベント「ツナガル灯台マルシェ」を、2023年11月11日(土)、長崎県平戸市「生月(いきつき)島」にある大バエ鼻灯台・生月長瀬鼻灯台で開催しました。
生月島は、1周約30kmと比較的小さいものの、数々のCMに採用されている海沿いの景観美、捕鯨の島として栄えた歴史や、今なお残るかくれキリシタンの聖地と文化など、数々の魅力を持つ有人島。北に大バエ鼻灯台、南に生月長瀬鼻灯台と島の南北に2つの灯台があります。
ツナガル灯台マルシェは、これら2つの灯台を「つなげる」ことで生月島の魅力を島外や市外に向けて発信するため、地元有志からなる「灯台からのメッセージ運営委員会」が企画運営を手掛けました。
当日は、生月や平戸市近郊の食材を使った飲食店など13店舗を集めた「灯台マルシェ」や、地元の子どもたちやバンドなどが出演する「灯台ステージ」を大バエ鼻灯台横で開催。灯台のすぐそばで採れたいもを使った焼きいも販売が開店直後から人気を集めたほか、冒頭のあいさつに立った平戸市の黒田成彦市長がサプライズでTUBEの楽曲「灯台」を弾き語りするなど、序盤から盛り上がりを見せました。ステージの合間には2つの灯台を中継で結び、来場者に灯台巡りを呼び掛けました。
ステージ脇では、地元の小学生14人が作画を手掛けた手作り紙芝居を上演。江戸時代に活躍した生月島出身の力士「生月鯨太左衛門(いきつき げいたざえもん)」の伝記や、生月島を本拠に九州屈指の鯨組(=江戸時代の捕鯨会社)として栄えた「益冨(ますとみ)組」初代当主の出世物語を披露し、好評を博しました。
海から2つの灯台を眺め、自然景観や島の歴史文化にふれるクルーズや、地元中学生によるガイドを聞きながら2つの灯台間11kmを楽しく観光するヒッチハイク体験も行い、灯台と島の魅力を参加者に伝えました。ガイドを務めた中学生と参加者の双方から「場所を訪ねるだけでなく、人とのつながりが生まれるのがとても楽しかった」との声が上がり、2つの灯台を「ツナゲル」ことで人と人とが「ツナガル」成果が生まれました。
今回の主役となった2つの灯台のうち、島の南に位置する生月長瀬鼻灯台はアクセスしにいこともあって訪ねる人がほとんどおらず、案内板さえもありませんでした。そこで、事前に地元の小学生10人に描いてもらったイラストをコラージュした3種類の案内板を制作し、灯台へのルート沿いに設置しました。今後も島を訪れる人が灯台巡りを楽しめるよう、イベント終了後も常設設置しています。
日暮れが迫る頃、益冨組に伝わる祝いの歌「勇魚捕唄」の保存会がステージに登場。来場者は威勢のよい太鼓の調べに耳を傾けながら、美しい夕日を見送りました。
この日のイベントには約1000人が来場し、このうち約3割が平戸市街や県外から訪れました。イベントに参加した島民からは「生月にこんなにたくさんの人が来てくれてうれしい」との声が聞かれました。準備や運営に携わったボランティアスタッフは100人に上り、大バエ鼻灯台下の野営場がイベントに合わせてお得なプランを設定するなど、灯台を軸にたくさんの「ツナガル」が生まれるイベントとなりました。