日本初の「灯台ホテル」実現に向けた調査研究に取り組んでいます【和歌山県串本町 潮岬灯台】

2024/02/21

潮岬灯台(和歌山県串本町)の利活用を考える「紀の国灯台利活用推進委員会」が、国内初の「灯台ホテル」実現に向け、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環である「新たな灯台利活用モデル事業」の助成を受けて調査検証に取り組んでいます。

灯台ホテルとは

海外には、灯台に隣接する旧官舎(灯台守が住んでいた建物)を改装し、宿泊施設として活用している例があります。「海と灯台プロジェクト」では、これを「灯台ホテル」と呼んでいます。

国内ではさまざまなハードルがあり、灯台ホテルはまだ実現していません。

灯台ホテル実現への取り組み

紀の国灯台利活用推進委員会は、「魅力的な宿泊施設は目的地になる」との考えに基づき、旅の目的地になるような灯台ホテルの実現性や目指すべき姿について調査研究を行っています。

同委員会が灯台ホテルの候補地としている潮岬灯台には、日本の灯台の父といわれるイギリス人技師、ブラントンが明治3年に建造した石造りの旧官舎が今なお残されています。2022年度はこの旧官舎を宿泊棟として活用できるかについて、耐震性や設備面などの観点から調査を行いました。

今年度は一歩進み、世界中から注目される灯台ホテルにするには、どのような形態や制度がふさわしいかについて調査を進めました。

今年度の調査項目

今年度は、

・海外視察
・国内高級宿の調査
・国内灯台の利活用事例調査
・灯台で過ごす時間の演出についての実証調査

の4項目について調査を行いました。

このうち海外視察は、各地に灯台ホテルが点在するスコットランドを訪ね、実際に灯台ホテルに宿泊したり、スコットランドの灯台を管理するノーザンライトハウスボードで灯台利活用に関する話を聞いたりしました。

「灯台ホテル」先進地の視察を踏まえて

スコットランドには、潮岬灯台の旧官舎と外観や間取りがそっくりな建物が数多く残っており、現地での聞き取りの結果、潮岬灯台が建てられた頃、スコットランドでは一般的な建物であったことが分かりました。

つまり、潮岬灯台の旧官舎は150年前にスコットランドの技術が日本に伝わった何よりの証拠であり、幾つもの意味で価値がある建物であることを再認識しました。

また、現地にはさまざまな営業努力をしている魅力的な灯台ホテルがある一方、手入れがあまりなされず魅力を損なっている灯台ホテルもあること、魅力的な灯台ホテルでも観光閑散期には集客に苦労している現実を目の当たりにしました。

これれらのことから同委員会は灯台ホテルの実現に向け、

・灯台ホテルの存在が当たり前になった地域では、灯台ホテルも特別扱いされず、他の宿と横並びで評価される

・灯台ホテルを事業化するなら、物珍しさが過ぎ去った後を見据え、10年~20年単位で計画を立てるべき

・宿泊施設として勝負できるサービス内容を用意すべき

という結論に至りました。

灯台ホテルの具体的な構想

同委員会はこれまで、旧官舎を1棟貸しする方式での灯台ホテル実現を構想していましたが、海外視察を含めた4項目の調査を踏まえ、新しい灯台ホテルの形として「別棟案」を検討していくことになりました。

【別棟案とは】

灯台&旧官舎隣接地に計5組が宿泊できるコテージ棟2棟を建設し、旧官舎をカフェやレストラン、レセプションとして活用する案。一棟貸しよりも多くの人が旧官舎に出入りしてその価値に触れることができ、料理人も確保しやすいなどのメリットがあります。

2024年度以降について

今後は旧官舎一棟貸し案と別棟案の両方について検証を続け、案をどちらかに絞ったうえで実現に向けて活動していく予定です。実施主体となるNPO法人を設立すると共に、関係機関や自治体との協議、地域の企業や団体との関係づくりなどにも取り組んでいきます。

写真提供:紀の国灯台利活用推進委員会
文:佐々木康弘