「名誉灯台長」が地元の灯台の長い歴史と重要性を語り伝える 【熊本県天草市 湯島灯台】

2023/03/28

灯台は海の安全を守るだけでなく、その文化的・歴史的価値が見直されている。熊本県上天草市大矢野町にあり、島原湾を往来する船舶を見守る湯島灯台には、灯台の役割や重要性を伝える「名誉灯台長」がいる。地元に住む松尾重人さんだ。

「灯台は昔から遊びに来ている場所ですし、漁業もしているので大事なものだと認識しています」と語る松尾さんは、本業である漁業を営むかたわら海上保安部から委嘱され、15年以上にわたって防波堤灯台などの監視も務めている。

熊本海上保安部の近藤竜一郎さんは「通常の灯台の監視に限らず、障害が発生したときに対応してもらったり、湯島灯台の歴史や魅力を島外の人たちにも広めてもらったりと、一歩踏み込んだ活動をしてもらっています」と名誉灯台長である松尾さんに信頼を寄せる。

古くは天草・島原の乱で蜂起を決める話し合いが行われたことから「談合島」の別名を持ち、近年は猫が多いことから「猫の島」としても人気を集める湯島。その西端にそびえ立つ湯島灯台は1916(大正5)年に初点灯し、2007(平成19)年以降は光源がLEDに切り替わっているが、それ以前の白熱灯だった頃には松尾さんが修理を任されたこともあったという。

松尾さんは「あと何年できるかわからないですが、今後も灯台を大事にしていきたいと思っています」と慈しむような視線を湯島灯台に向ける。100年を超える歴史を持つ地元の灯台と長い年月をともに過ごしながら常に身近なものとして感じてきただけに、その存在は松尾さんの生活とは決して切り離すことができないものなのだろう。

 

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