日本有数の景勝地で歴史の生き証人として在り続ける銚子のシンボル 【千葉県銚子市 犬吠埼灯台】
2023/03/31房総半島の最東端、犬吠埼は、江戸時代にはすでにその風光明媚な海岸線を訪れて景色を楽しむ「磯めぐり」が行われていた景勝地。岬にはこれまた日本を代表する灯台の1つである犬吠埼灯台が立っている。「世界灯台100選」「日本の灯台50選」にも選定される犬吠埼灯台は、1874(明治7)年の初点灯から数え、間もなく150周年を迎えようかという歴史を誇る。その文化財的価値から2020(令和2)年には国の重要文化財に指定されており、海上保安庁の「Aランク保存灯台」にもなっている。
そんな犬吠埼灯台と、設計した“日本の灯台の父”と呼ばれるイギリス人技師ブラントンの研究や保存活動を行う「犬吠埼ブラントン会」の代表幹事を務める仲田博史さんは、どこの灯台にもたいてい付いているという初点灯の日を刻んだプレートを示しながら「これは2代目のプレートで、初代のものは腐食してしまっていて、現在は展示室の一角にあります」と、まずはその歴史の古さを印象付けた。
「典型的なスコットランド様式、スチーブンソン方式で、入口には筑波山の石(花崗岩)を使っていて、中はレンガで造られています。レンズを備えて光を遠くまで届けるという西洋式の灯台は幕末から明治にかけて西洋列国の強い要望によって建設が始まったわけですが、犬吠埼灯台はそれより少し遅れて建てられました」と、その歴史を振り返る。
また、1910(明治43)年に竣工し、2008(平成20)年まで100年近くにわたり霧笛を鳴らし続けてきた「旧犬吠埼霧信号所・霧笛音響装置」も、灯台とともに国の重要無形文化財に指定されている。その音色は「日本で最後のエアーサイレン式の霧笛で、廃止された後も録音したものがここで聞けるようになっています」とのこと。
さらに仲田さんは「灯台は、GPSなどの発達によって基本的には大きな役割を終えつつありますが、これからは文化財としての新しい価値を見出すことに力を入れて、保存・活用していければと思っています。観光や市民が活動する場所として利用していこうという動きが出てきています」と、新たな時代に目を向ける。
「銚子で起きた出来事なども灯台は全部見てきたわけです。守り神といったら大げさかもしれませんが、そういう気持ちで接しています」
長い年月を土地にしっかりと根ざしながらその一部として欠くべからざる存在となった灯台は、少しずつ役割を変えながら、人々の生活とともに在り続ける。
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