「京の百景」にも選ばれる断崖の自然美は「山陰海岸ジオパーク」の一角 【京都府京丹後市 経ヶ岬灯台】

2023/03/31

京都府丹後半島の最北端、経ヶ岬は、海の沖から岬を眺めると柱状節理と呼ばれる規則的な割れ目の入った岩(安山岩)が、まるで経巻を立てたように見えることからその名が付いたとされている。その海抜140メートルの地点に石造りの白亜の灯台、経ヶ岬灯台が建っている。2022(令和4)年12月に国の重要文化財に指定され、日本の海運の歴史を現代に伝える現役の洋式灯台として、丹後半島活性化の契機となることも期待されている。

現在は自動化されている経ヶ岬灯台の保守管理は、舞鶴海上保安部がその任を担っている。舞鶴海上保安部交通課長の井上景介さんは「経ヶ岬灯台は1896(明治29)年に着工され、その2年後の12月25日、クリスマスの夜に初点灯しました。当時の光源は石油灯で、その後は白熱灯、昭和になってからは電球を経て、現在はメタルハライドランプとなっています。光の強さは28万カンデラ、ろうそく28万本分の明るさに相当します。光の届く距離は約41km(22海里)で、沖を行く船の安全な航行を見守っています」と、経ヶ岬灯台の歴史や機能の概要について話してくれた。

さらに、「レンズはフランス製の第1等フレネル式レンズです。高さが約280センチ、重量が約5トンという大きさで、近畿地方では唯一ここだけで使われています。フレネル式レンズは、点である光源を平行な光の束に変えることができるようにレンズがそれぞれ配置されています」と、初点灯から現在まで変わらず使用されているレンズの特徴も詳説する。

重いレンズを水銀槽に浮かべることで回転抵抗を軽くする「水銀槽式回転装置」も、レンズと同じくフランス製のものが建設当初から使用されている。また、電動化される前は分銅が重力で落下する力を動力源としてレンズを回転させていたが、その分銅を落下させていたスペースも当時のまま残されている。

「経ヶ岬灯台には多くの石材が使われています。定かではないのですが、これらは灯台の下の海岸にある岩を地元の人が切り出したものだという話も伝え聞いています。そうした歴史的、文化的な価値が認められ、重要文化財として指定を受けたことは海上保安庁としても非常に光栄に思っています」と誇らしげな井上さん。

その文化財的な価値について、京丹後市教育委員会 文化財保護課の課長である新谷勝行さんは「江戸時代の国絵図を見ると、経ヶ岬のあたりは、秋冬に廻船が通ろうとすると大変な難所であったという記述があります。海流が速くて船が行き交うのが難しい場所だったということも、1898(明治31)年という早い時期から灯台が設置された理由だったのではないかと思います。京丹後市として、経ヶ岬灯台は海の文化財として重要なものだということを発信していきたいと考えています」と語る。

時代を超えて丹後の海を見つめ続けてきた経ヶ岬灯台は、経済産業省の近代化産業遺産にも指定されており、さらに「日本の灯台50選」や「京の百景」にも選ばれている。今後もより一層、丹後半島を代表するシンボルとしての存在感は大きくなっていくことだろう。

 

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