灯台に魅せられ人生を捧げる“スペシャリスト”が守り続ける 【山口県下関市 角島灯台】
2023/03/31関門海峡の北西に広がる響灘に浮かぶ角島は、本土から島へと架かる白い橋(角島大橋)とコバルトブルーの海とのコントラストが美しい、山口県内でも屈指の絶景ポイントだ。その西端に立つ角島灯台の高さ30メートルにおよぶ堂々とした姿は、島の景観にさらなるアクセントを加えている。日本海側では初の洋式灯台で、石造りの外観は無塗装だが、これは日本では男木島灯台(香川県高松市)とここの2つだけだという。
角島灯台を管理する公益社団法人燈光会角島支所の嘱託職員、平尾豊重さんは「歴史的にも文化的にも価値のある灯台で、その存在感は地域のシンボルマークと言えます」と語る。105段あるらせん階段を登った先にあるのは、島と海とを一望できる大パノラマだ。日本全国で16基ある参観灯台の1つでもあり、多くの観光客を魅了している。
元海上保安庁職員でもある平尾さんは「灯台の仕事をしてきましたから、一般の人に見てもらえるのはいいことだと思います」と、訪れる人々を見つめながら感慨深げな表情を浮かべる。学生時代から数えて60年以上も灯台に関わり続けている、まさに灯台のスペシャリストなのだ。
「レンズは八面体になっているので、光の筋も八面に出るんです。灯台の中でも大変珍しいものです。反対側は暗弧といって陸に光を漏らさないように、海面だけを照らす窓になっています」と、角島灯台の大きな特徴である、日本に5基しかない大型の第1等フレネルレンズについての解説も灯台のスペシャリストならでは。
1876(明治9)年の初点灯から140年以上にわたって現役の灯台として光を点し続ける角島灯台は、2005(平成17)年には下関市指定文化財に、2020(令和2)年には国の重要文化財にそれぞれ指定されている。GPSの登場などにより灯台の必要性が薄れていく中でも、角島のシンボルとして守り続けていきたいと平尾さんは話す。
「灯台に関わってきた精神というか、これしかないという思いで灯台のために心血を注いできました。自分の選んだ道ですからね。だんだんと光の灯台がなくなっていることは心配ですけれど、こういう立派な灯台は永遠に残るように頑張ってもらいたいと思っています」
海の道しるべとして、観光資源として、海を行き交う船や地域住民の生活を支え、あるいは心にやすらぎを与えてくれる拠り所として、灯台が果たすべき役割はまだまだ色あせることがない。
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