「海と灯台のまち」最新の取り組みを発表!海と灯台プロジェクト連携会合2020(中編)
2021/03/11日本財団は「海と日本プロジェクト」と9つの自治体がZoomを使ってつながり、「海と灯台プロジェクト連携会合2020」を2021年2月4日(木)に開催しました。新型コロナウイルスの感染予防対策により、オンラインでの情報共有となりましたが、現在までさまざまな海と灯台にまつわる事業を実施してきた各自治体の灯台関連の取り組み、新たに見えてきた課題、そして、次年度以降目指すものなど、たくさんの意見やアイデアが飛び交い、2時間強のイベントでありながら、あっという間に感じてしまうほど、盛りだくさんな内容となりました。
今回は5自治体による「モデル事業」に関する発表を紹介します。
【マリンピングで「灯台に泊まる」を実現へ】
まずは北海道江差町・鴎島灯台について。発表者は一般社団法人北海道江差観光みらい機構の浅見尚資事務局長です。「灯台に泊まる」を実現するために行った取り組みは「灯台とマリンピングフェスin江差」。
かつては小さな水族館まであり、2、30年前まではレジャーのメッカとして活気に満ち溢れていた「かもめ島」での実証実験イベントには、40名が参加。海を感じ、海の魅力を丸ごと体感するキャンプは笑顔が溢れるイベントだったようです。全国から集客できる体験であり、withコロナにマッチするマリンピングの常設化を目指し、町の活性化につなげていきたいと語っていました。
【灯台と伝統芸能のコラボレーション】
次は、岩手県普代村・陸中黒埼灯台について。発表者は、普代村農林商工課商工観光係主事の前川正樹氏です。こちらの2020年度のモデル事業は灯台×神楽の実演「陸中黒埼灯台×鵜鳥神楽」です。
コロナの影響もあり、無観客で動画撮影をし配信するという取り組みです。ライブ配信という新たな試みでしたが、withコロナの時代にぴったりだと実感したそうです。郷土芸能の伝承のためには、披露する場所が必要です。未来を担う子供たちへの生きた教材としても教育効果が期待できると考え、海と灯台プロジェクトによるwithコロナ事業として、各地の灯台、神楽のコラボ「○○灯台×○○神楽」のライブ配信を提案していました。
【灯台から灯台までを結ぶ「海道」が誕生!】
続いては、島根県松江市・美保関灯台と出雲市・出雲日御碕灯台について。島根県の2つの灯台がタッグで挑んだプロジェクトも紹介されました。美保関灯台の発表者は松江観光協会美保関町支部の住吉裕事務局長、出雲日御碕灯台の発表者はTSKさんいん中央テレビ東京支社の泉健二営業部長です。コロナ禍でさまざまなイベントの実施、そして集客に大苦戦する自治体や事業者が多い中、2020年も順調に来訪者数を右肩上がりに伸ばした美保関灯台の取り組みは、マイクロツーリズム(近隣誘客強化への切替)、ネイチャーツアー(自然の中での癒しをアピール)、ハード・ソフトの整備(次の展開に向けた環境整備)でした。物産品のオンライン販売やオンラインツアーの実施にも積極的に取り組み、「コロナに負けない」を見事、体現した例です。コロナの状況が落ち着いたら、目指せ50万人!と意気込みを見せていました。
次に、出雲日御碕灯台の取り組みです。灯台を「点ではなく線で結ぶ」をテーマに海岸線を廻る新しい移動体験を提供しています。島根半島の日の出スポット・美保関灯台と、日本遺産に登録された日が沈む聖地出雲の出雲日御碕灯台。この二つの灯台をつなぐ「海道」の開発に取り組んでいます。その一環として、海道のルートマップを制作。ルート上にある観光スポットを掲載し、さまざまな場所、歴史に興味・関心を持ってもらうことを目指しています。海道の名前を募集するキャンペーンも実施、3月に発表を予定しているとのこと。次年度以降は、海道の認知度をアップし、灯台への来訪の促進をはかり、もっと海の魅力をはしんしていくべく、サイクリングロードとしての活用や、季節ごとにおすすめのルートを提案や他のイベントとの連携など、次々とアイデアが出ていました。
【灯台をキャンプを通して、体験学習の場へ】
続いては長崎県長崎市・伊王島灯台。発表者は長崎市南総合事務所伊王島地域センターの荒木豊文所長です。恋する灯台に認定され、多くの観光客が訪れる中、もう一歩踏み込み、学習の場として訪れる機会ができないかと考え、社会学習施設として「きみも灯台守になろう」を実施。灯台でのキャンプ、マリンアクティビティ、BBQやナイトウォークなどの遊びの要素と灯台の仕組み、伊王島の歴史、夜の灯台の見学などの学びの要素をバランスよく組み合わせた施策だったようです。
参加した生徒からの声を、市長へ届け、長崎港開港450周年記念にあわせて、良い提案ができたそうです。何より、生徒たちの笑顔が印象的だったことも教えてくれました。
2021年の「海と灯台ウィーク」を見据えて
この後「海と灯台プロジェクト」 事務局の宮野克秀による「海と灯台ウィーク」の実施報告が行われました。2020年の実施概要として、各自治体の取り組みをずらりと紹介。「海と灯台ウィーク」は、多くの一般の方々と、灯台が接点を持てる重要な1週間とし、たくさんの埋もれたストーリーを掘り起こす施策を、自治体や事業者のみなさんと協力して取り組んでいきたいと呼びかけました。これからも「海と灯台ウィーク」で、より大きなムーブメントを起こしたいと力強く語っていました。
(後編「海と灯台のまち」事例発表に続く)
取材:タナカシノブ