「灯台守をなくして、歴史は語れない」『ライトハウス』脚本家マックス・エガース氏インタビュー(第3回)

2021/07/10

現在、日本公開中の映画『ライトハウス』(ロバート・エガース監督作)の脚本を手掛け、監督の弟でもあるマックス・エガース氏へのインタビュー第3回をお届けします。第1回・第2回は下記を参照ください。

「灯台は、神話の巨人のような存在」『ライトハウス』脚本家マックス・エガース氏インタビュー(第1回)

「セットを建築して、当時の苦労を実感」『ライトハウス』マックス・エガース氏インタビュー(第2回)

 

——『ライトハウス』を製作して、世界の灯台研究者とのコミュニケーションなどはありましたか?

マックス・エガース:私自身は、研究者の方々と話をして反応を確かめたことはありません。ですが、灯台ステーションを建てる上で、美術スタッフたちはセットを可能な限りリアルに、正確に表現するために、United States Lighthouse Society(アメリカ灯台協会)とコミュニケーションを取り合っていました。実際、美術監督のクレイグもアメリカ灯台協会に入会していたのではと思います。

 

——欧米の方々にとって、現在の「灯台」はどのような認識が持たれているのでしょう?

マックス:私や兄がそうであったように、欧米ではバカンスなどで灯台を訪れる人が多いです。しかし、灯台について調べたり、物語を作ったりしていると、このシンボルがあらゆるところに存在していることに気づきました。ビジネスや会社のロゴからジュエリー、アート、音楽に至るまで、灯台は私たちの集合的無意識の中にありながら、今なおインパクトのあるアーキタイプなシンボルです。これは、仕事や遊びで海を旅する多くの人々にとっては、今でも重要な存在であるにもかかわらず、GPSなどの技術進歩により、西洋の大衆文化の中では、灯台とその管理者は伝説のような存在になってしまったという事実によるものです。

——現在、「灯台」のその役割を失いつつあります。マックス氏は「灯台」について、今回の映画を通して改めてどう捉えられたのでしょう?

マックス:灯台には常に特別な思い入れがありますが、映画の題材としては『ライトハウス』でやり切ったと感じています。。ですが、あなたがおっしゃるように、灯台は世界でその役割を失いつつあります。だからこそ、魅力的なストーリーと映画を作ることに加えて、私たちの文化的歴史における灯台の重要性を再認識してもらえればと願っています。

 

——日本では「灯台」を愛するファンが増えており、この映画にも期待が高まっています。ぜひ日本の灯台ファンへメッセージをお願いします。

 マックス:日本で『ライトハウス』が公開されることを大変光栄に思うとともに、私たちの映画、そしてこの映画が生きているテーマや歴史に関心を寄せていただいていることに感謝しています。

灯台のファンの皆さん、『ライトハウス』はフィクションですが、灯台守の人生とそのビーコンを少しでも正当に表現できたと思います。これらの建物は、技術的な驚異であり、命を救う信号でした。物資やサービス、人々が危険を伴わずに海岸に到着できるようにしてくれた灯台守なくして、歴史を語ることはできません。彼らの存在は保存され、記憶されるべきです。私たちは、これらの美しい灯台を訪れ、それに関しての物語を語り、灯台を建設し維持し続けた人々の真実の物語を思い出すことによって、彼らの歴史の光を保つことができることを願っています。

 

マックス氏へのインタビューは以上です(今回はメールインタビューへご快諾をいただきました)。灯台、そして灯台守の描写を徹底的にリアルに行い、その歴史を映像として刻んだ本作は私たちにとっても、とても大切な映画になるのではないでしょうか? 映画が公開され公式HPでは(ネタバレ含みの)徹底解説コーナーが設置されています。ぜひこの機会に映画そのものの魅力と、国境を超えて、海のかなたで光を灯し続けた人々への想いを感じ取ってみてください。

 

映画『ライトハウス

7月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

STORY:1890年代、ニューイングランドの孤島に二人の灯台守がやって来る。彼らにはこれから四週間に渡って、灯台と島の管理を行う仕事が任されていた。だが、年かさのベテラン、トーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と未経験の若者イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)は、そりが合わずに初日から衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、やってきた嵐のせいで二人は島に閉じ込められてしまう……。

監督・脚本:ロバート・エガース/脚本:マックス・エガース/撮影:ジェアリン・ブラシュケ/製作:A24 

出演:ウィレム・デフォー、ロバート・パティンソン

2019年/アメリカ/英語/1:1.19/モノクロ/109分/5.1ch/日本語字幕:松浦美奈

原題:The Lighthouse/提供:トランスフォーマー、Filmarks/配給:トランスフォーマー 

公式HP:transformer.co.jp/m/thelighthouse/

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