青森県 下北郡東通村 尻屋埼灯台
東北初の洋式灯台。古くから難破船の多い岬として恐れられていた尻屋崎。明治に入り世界各国との貿易を進めるにあたり船舶安全のために建てられた。レンガ造灯台としては高さ日本一を誇る。2022年12月、国の重要文化財に指定。
灯台データ
- 初点灯: 1876(明治9)年(1945年破壊、1951年復旧)
- 灯台の高さ: 32.8m
- 灯りの高さ: 45.7m
- 形状: 白塔形
- 灯質: 単せん白光
- 光達距離: 約34km
- レンズ: 第二等閃光フレネルレンズ(建設時は第二等不動フレネルレンズ)
- 構造: レンガ造
- 設計者: ブラントン
地理データ
地理:海の難所であり、ジオサイト
約2万年前に津軽海峡ができると暖流と寒流が流れ込むこととなる。それによって生まれた海は古くから難所として舟人を恐れさせてきた。しかしその成り立ちによって豊かな自然を残すこととなり、ジオサイトとなっている。
気象:「やませ」が吹く下北の気候
尻屋崎周辺では霧が発生すると濃霧になり易い。また下北半島では「やませ」と呼ばれる強い風が吹くことも多い。冬季は降雪によって灯台も参観できなくなる。
歴史:灯台建築に携わった会津藩士
戊辰戦争に敗れ移封された会津藩士たちは、明治期にこの地に斗南潘を立潘。尻屋崎灯台の建築に藩士たちが尽力したと伝えられる。灯台のレンガを斗南藩が造った史実も近年、史料から明らかに。
伝説:漁師を助けた金毘羅様の使い
「金毘羅宮小祠」には、金毘羅様を祀る船が遭難した際、サメとカニが連携して漁師たちを陸へ導いたという伝説がある。以来、地元では金毘羅様の使いであるサメとカニを食べることを禁じる風習が続いている。
漁業:国内随一の漁獲高を誇るヒラメ
漁獲量全国1位の青森県産のヒラメは高品質で評判。東通村でもヒラメが水揚げされるが、「東通天然ヒラメ刺身御膳」として、天然ヒラメをはじめとした村特産の食材を堪能できる。
農業:下北の大地で育つ「ソバ」
東通村ではキタワセと呼ばれる種類のソバの栽培が非常に盛ん。この、でんぷん質が多く含まれる種のソバを用いた「東通そば」はつなぎを一切使用しない十割そばで、ソバ本来の味わいを堪能できる。
その他:尻屋崎だけで放牧される「寒立馬」
尻屋埼灯台の周辺で放牧されている「寒立馬」は、この地のみで育てられている農耕馬。実は食用馬肉としても出荷されている。
伝統芸能:中世芸能の姿を残す「能舞」
15世紀終わりに東通村に伝わり、現在は村内14集落で継続している。28もの演目がある国の重要無形文化財である。
海と灯台のまち紹介その他の海と灯台のまち紹介
珠洲市
禄剛埼灯台
明治期、能登半島の最突端、珠洲市の禄剛崎に建てられた石造の灯台。レンズを固定させ、遮蔽板を回転させることで灯火を点滅させる珍しい手法を用いた。石材を人力で崖下から運ぶ難工事の末に完成。
三浦市
安房埼灯台
一般公募により決定した三浦大根をモチーフとするデザイン灯台。建て直しに伴い、岩礁地帯から200m内側に入った城ヶ島公園内へと移設された。灯台の南東方約400mにある「高根神楽」を照らす照射灯も併設されている。(写真提供/三浦市)
西津軽郡深浦町
艫作埼灯台
白神山地を仰ぐ青森県深浦町の海岸線に建つ灯台。日本海北部の灯台では最大級の高さを誇る。青森県北部の龍飛岬と秋田県男鹿半島の入道崎の中間に位置し、漁船や南北を航行する船を広範囲に見守る。
高岡市
岩崎ノ鼻灯台
高岡市内唯一の灯台。海の玄関・伏木港が重要港湾に指定された同年に初点灯。以来、富山湾を往来する船舶の安全を見守り続けてきた。春には建設時に植栽された桜が美しい花を咲かせるため、「桜の灯台」と呼ばれる。
大船渡市
碁石埼灯台
末崎半島の先端となる碁石岬に建つ灯台。沿岸小型標識として、入り組んだ沿岸や大船渡湾などを航行する船舶の目標として設置された。三陸復興国立公園に指定された碁石海岸の一角として、灯台周辺は整備されている。
日向市
細島灯台
細島港入口の日向岬に位置する灯台。1910(明治43)年に赤レンガ造りの灯台として造られ、1941(昭和16)年に現在の灯台に。半円アーチ型の出入り口、バルコニーを支える持ち送りのデザインが特徴的。2019(平成31)年に国の有形文化財に登録された。
上天草市
湯島灯台
江戸時代、島原の乱の戦略上の要衝となった湯島の西端に建つレトロな灯台。島の高台から島原湾、湯島瀬戸を往来する船を照らす。灯台周辺から眺望する長崎、普賢岳のパノラマは絶景。晴れた日には世界遺産の原城跡が望める。
三浦市
城ヶ島灯台
日本で5番目に点灯した洋式灯台。初代はフランス人技師・ヴェルニーにより設計されたが、関東大地震で倒壊し、現在の姿に再建された。同じ島内の東側に建つ安房埼灯台とは、“ペア灯台”として知られている。
中頭郡読谷村
残波岬灯台
沖縄本島、東シナ海に面する残波岬の突端に建つ。終戦後、米軍の実弾練習場だった場所に建てられた白亜の灯台で、日本返還後に初点灯。灯台周辺は現在、沖縄海岸国定公園に指定され、沖縄本島有数のスポットとなっている。
網走市
能取岬灯台
大正時代、逓信省による航路標識事業で建てられた灯台。霧信号所も設置され、1948(昭和23)年までは灯台守が併設の宿舎に住んでいた。流氷により航行が途絶える2~3月は業務を休止していた。